クライストチャーチを出て約1時間半。アシュバートン(Ashburton)に小麦収量ギネス記録保持農家エリック・ワトソンさんの圃場があります。
訪問した当時は小麦の収穫がすでに始まっておりましたが、出迎えてくれたエリックさんは飼い犬を伴ってビーチサンダルで現れ、繁忙期にも拘わらず余裕が見られました。収穫期に3か月だけヘルパーを雇うほかは490haもの農地をエリックさん一家5名で管理。
圃場を案内するエリック・ワトソンさん
収量ギネス記録を作った小麦の品種は飼料用の小麦ということで、がっしりとした太い頑丈な茎に穂がぎっしりと実っていました。圃場をご案内頂いた後ご自宅にもお招きいただきギネス収量記録(2017年:1ha当たり16.79mt)の賞状を見せて頂くとともに、奥様お手製のマフィン・珈琲・紅茶を御馳走になりました。参考までに今年(2019年)の収量を日本帰国後に確認したところ、1ha当り11.5mt~12.5mtとのことでした。
小麦収量ギネス記録賞を前にエリックさん自宅で記念撮影
エリック・ワトソンさんご自宅にて
自宅で高収量の秘訣も話してくれましたが、大麦収量ギネス記録保持者のウォーレン・ダーリングさんとエッセンスは同じでしたので、エッセンスはのちほどレポートします。
2軒目に訪問した農家はアシュバートン(Ashburton)から30分ほど東へ走ったテムカ(Temuka)のニック・ウォードさん。約250haの圃場で小麦、大麦の他種苗用のホウレンソウ、タマネギ、アブラナの栽培をされていました。圃場ではタマネギ、アブラナを見せて頂きました。
圃場を案内するニック・ウォードさん
最後に大麦収量ギネス記録(2015年:1ha当り13.8mt)保持農家ウォーレン・ダーリングさんを訪問。ウォーレンさんの圃場はティマル(Timaru)郊外の太平洋に面した場所にあり約500haで営農。訪問した際は小麦収穫の真最中でした。
ウォーレン・ダーリングさんの圃場での小麦収穫風景
自宅のテラスでアフターヌーンティを御馳走になりながら、収量増の秘訣・エッセンスを話してくれました。
ウォーレンさん夫妻
テラスでの会話風景
① 2年に一度程度の頻度で土壌診断を行い、圃場を1ha単位に分けてヒートマップを作成。圃場の部位によって栄養素、Ph、ECにバラつきが出ない様に元肥で調整する。元肥の施肥量は控えめにする。
土壌診断
② 生育中に葉面分析を頻繁に行い、作物に不足している栄養素を必要な時に必要な成分のみピンポイントで葉面散布する。
肥料は液肥YaraVita™(※日本では未だ輸入販売されておりません)を農薬と混用して灌水の中に溶かし込み、両翼で50メートルほどあるスプレイヤーで追肥として施肥。追肥の回数は15-16回にも及ぶ。
両翼50m近い長さのスプレイヤー
YaraVita™の紹介
YaraVita™は成長ステージで不足している栄養素を微量要素単位で必要なときに必要な分だけ葉面散布する液肥。希釈して灌水システム=スプレイヤーを通して施肥します。農薬の種類により農薬との混用も可能。肥料登録の問題等があり日本への輸入は実現出来ておりませんが、今後日本の生産者様にもご紹介出来る様努力して参ります。
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③ 播種量は少な目にして過繁茂にならないようにする。
(聴取した情報では1ha当り72kgの播種量)
④ 少なめにコントロールした苗の分げつを増やす。
1m2当たりの目標分げつ数を1,000本にし穂はらみを充実させる。
⑤ 光合成の受容力の高い立った止葉を育てる。
収量との相関は3枚目葉が10%、2枚目葉が25%、止葉が45%:止葉を含む上部3枚の葉の出来で収量の80%を左右する。
収量は止葉の出来で80%が決まる
圃場で採取した収穫前の小麦(止葉の生育が良いものは穂はらみも良いことが分かる。)