日本で実験してみましたコーナーNo.4:キャベツに対するコンプレックスL366の追肥効果を確認してみました!

御無沙汰しております。新年になりましたが名古屋は大変寒い日が続いております。
昨年も北海道、関東、東北の栽培現場を巡回して様々な作物の生育状況を確認しました。
お会いした農家の皆様、大変お世話になりましてありがとうございました。また今年も引き続き御愛顧の程よろしくお願いします。
今年も皆さんにYara化成の肥効の素晴らしさを伝えて行きたいと思っております。

さて「日本で実験してみましたシリーズ」も4回目になりまして昨年秋からYara化成の特長を確認する為に栽培試験を行っておりました。
今回はキャベツの元肥と追肥にYara化成を使用した場合に普通の化成肥料での栽培と何かしらの生育差があるか否かを試験してみました。

一般的にはキャベツの施肥設計は普通の化成肥料を元肥に使用して、追肥にはいわゆる「NK化成」を追肥するようなパターンが多いものと思いますがキャベツのようになるべく早く外葉を充実させて結球肥大に結び付けて行くイメージの肥効が必要な作物においてはYara化成のように他の肥料と比べて溶けやすく肥効が早く出る肥料の使用は有効ではないかと思い、実証試験をしてみました。もう既に効果を実感されている方もいらっしゃると思いますので今更ながらという面もありますが結果を見てみて下さい。

〇試験概要

育苗は播種を128穴セルトレイにて2022年8月29日に実施し25℃の室内にて発芽させて高温下にて育苗を実施しました。品種は「春波(タキイ種苗)」です。事前に荒起こしをした後に2022年9月25日に元肥を施肥して、耕うん後120㎝幅の平畝を作成して、株間33㎝間隔にて2条(条間40㎝)にて定植をしました。変わらず小面積での試験ですが計算上4160本/10aの株が入るような設定になっております。

施肥については当初元肥+追肥2回にて考えておりましたが生育状況を判断した結果追肥は1回にて栽培しました。元肥の施肥量は窒素成分で18㎏/10aにて統一して(今回はあえてリン酸、カリの施肥量は考慮しておりません。)追肥の施肥量は窒素成分で7㎏/10aにて統一しました。合計の窒素施肥量は25㎏/10aになりました。各区の施肥設計をまとめると以下の通りです。



〇生育推移

出張続きで時間が思う様に取れず、播種後27日経過した苗を定植する事になりました。
ご存知のように最近はこの作型の育苗時期が暑いことが多く、どうしても徒長気味の苗になりやすいですが色々な対策を実行し何とか仕上げました。
老化苗ですが それなりの苗にはなったかと思います。子葉は落ちてしまいましたが本葉4葉期で葉の黄化もなく茎もまずまず太くなりました。様々な液肥を駆使して育苗しましたが感想としては「液肥ってよく効くなあ~」とつくづく感じました。
定植直後の状況です。これから暑い中頑張ってくれ!と心の中でお願いしました。



●10月14日(定植19日後)




各区共に定植19日目で条間が埋まるような生育になりました。見た目は順調そうな生育状況ですがこの時期は降雨が少ない状態が続いた為、天気の良い日中は若干葉が萎れ気味での生育推移になり、根圏の形成は土壌が乾燥した為に不充分な感じでした。
当日は生育調査を行いましたが各区共に同等な生育をしており、ある意味全体の生育が揃っている状態でした。
1回目の調査時点では元肥の違いにおいて生育差はない結果になりました。

条間が埋まる前に追肥を行うべく1回目の追肥、土寄せ作業及びアオムシ等害虫、殺菌を目的に農薬防除を実施しました。

生育状況を見て追肥は1回にする事を決めて今後の生育推移を見て行く事にしました。
定植してからも暑い日が続いたので元肥においては肥効差が出なかったようでした。
やはり温度と肥効は大きく関連性があるようです。

10月14日生育調査結果




葉面積指数:外葉の最長幅の縦と横を掛けた値。この値が高いと外葉肥大が進んでいる事になる。

●11月4日(定植39日後)




11月4日生育調査結果



前回調査から20日経過しましたがあっという間に結球始期になっておりました。
久しぶりにキャベツを作付けしましたが「こんなに生育早かったっけ?」と思ってしまいました。外葉17~18枚で結球期を迎えるような感じでした。
写真を見て頂ければ分かると思いますが結構旺盛な生育になりました。今回の調査結果にて明確な傾向が見られた点がありました。
①元肥と追肥にYara商品を使用した試験区①、試験区③において葉色が濃く(葉が厚い)葉数が多くなり、葉面積指数が大きい値になった事。(試験区②、試験区④、慣行区と比較しても明らかに生育が良い。)
②元肥に14-14-14、追肥にYaraL366を使用した試験区⑤で葉色が濃く(葉が厚い)傾向があった事。(慣行区と比較して大きな差がありました。)
調査していても調査結果が実感出来ました。特に葉厚があり、葉が立っている事はビックリするぐらいであり今回は特にYaraL366の追肥の効果に驚かされました。
私の主観ですがYaraの化成肥料には窒素、リン酸、カリ等の主成分以外に非常に水に溶けやすいカルシウム成分が成分保証はされていない(肥料法上登録は出来ない)ながらも、含有している(YaraN555は6%、YaraL366は4.85%、Yara217は4.46%)ので窒素を初めとして、リン酸、カリの速やかな効果はもちろんですが一般的に不足気味な水に溶けやすいカルシウム成分の効果が高く葉の厚みが出て葉色値が高くなったのではないかと推測しました。
また元肥の種類をYara製品にした試験区にて生育差がついているのは定植後からの肥料成分の吸収が良好でカルシウム効果もあいまって1回目調査以降の肥効も持続した事で旺盛に進み通常の化成肥料と生育差が出たのではないかと思われました。
慣行的に追肥で使用される16-2-16は窒素成分16%のうち10.5%がアンモニア態窒素で、あとの5.5%は尿素にて保証された肥料ですが尿素が植物に吸収される形に変化する間に気候条件等にて作物に吸収される形になりにくく無駄になる事で肥効動向が変わる事があるので 当試験の場合はこのような結果になったのではないかと思いました。YaraL366は窒素成分23%のうちアンモニア態窒素12%、硝酸態窒素11%含有しており、両形態共に植物に直接吸収されるので無駄なく肥効を示したものと思われました。溶けやすく、作物が肥料吸収、利用しやすい形態にて含有しているので肥効は高いのは分かって頂けるのではないかと思います。
またYara製品のリン酸は効果の出やすいポリリン酸の形で含有しているのでその肥効についても効果の一端を担っているのではないかと思いました。
とりあえず外葉がしっかりすれば結球もしっかりしてサイズの揃った美味しいキャベツが収穫出来るはずなので結球期の生育が楽しみになりました。

その後、試験区① 試験区③ 試験区⑤が11月10日頃から結球開始して後の区は3日遅れぐらいで結球を開始した感じでした。外葉の葉数は各区共に18枚程度でした。

●11月17日の各区の生育状況




結球始期です。写真上は各区の差はないように見えると思いますが試験区①、試験区③
試験区⑤は若干結球開始のスピードが早かった印象がありました。やはりキャベツは
「初期生育から如何に充実した外葉を作るか?」が重要なポイントになるので元肥の種類施肥量はこだわりを持つ必要がありますね。あと追肥時期が定植後早いので如何に外葉
肥大、結球期に向けて素早く効果が出る肥料を使用して施肥した肥料を体内に取り込むかが重要だと思います。その後も下葉の黄化や病気もなく順調に結球して12月5日には「もうそろそろ収獲するか!」と思うようなキャベツに仕上がって来ました。



写真のような生育状況になりました。
この時点で結球径が20㎝を超えそうなキャベツが出て来ましたので12月15日に結球径が20㎝を超えたキャベツのみ1回目の収穫をする事にしました。結球始期を11月10日と
すれば結球日数は35日となりました。その際の収穫率を見ると・・・



という結果になり追肥にYaraL366を使用した試験区において収穫率が高くなる結果になりました。
やはり結球開始時の生育が良いと結球肥大も早くなる事を再認識しました。
また追肥の種類によってここまで生育差がついた事は大変驚きました。やはり「定植からさほど経過していない時期に行う追肥は非常に重要である!」と私自身も実際に感じる事が出来て勉強になりました。今後の施肥設計立案の際に活かしていきたいと思いました。

12月15日の収穫物の写真です。



その後、収獲しなかった株の結球肥大を促す為に生育をさせて最終的に12月26日に全ての株を一斉に収獲しました。各区共に欠株はなく全部で15球/区のキャベツが収穫出来ました。結球日数は46日です。収量調査結果、収穫物の写真を下記に示します。



球形指数・・・(球高/球形)×100
10a当り計算収量・・・4160株/10a植付株数として収穫球率85%と仮定して計算した。


収量調査結果より分かった事は・・・
YaraL366を追肥にて使用した試験区の総重量、結球肥大が良好であり、結球重については慣行区と比べて13~24%程度重くなる結果となりました。それに伴い規格別の割合もM~3Lサイズにて揃った結果となりました。16-2-16を使用した区はYara化成を使用した方が慣行区よりも結球重は重くなったが追肥の性能差を埋められるような感じではなく、S~Mサイズにて揃ったような結果でした。当試験においては追肥で使用したYaraL366の性能が非常に優れている事が明確にわかるような結果となりました。
またYara化成を元肥で使用する事で慣行肥料を使用するよりも結球重が重くなる傾向があるようでしたが明確に効果が分かる感じではない事が示唆されました。
当試験の結果としては試験区①の結果が最も良いものと思われるので今後現地にて活用すると良いように感じました。
キャベツの元肥にはYara217、追肥にL366の組み合わせを是非お試し下さい!
次回は今年の春から試験をしたいと思います。楽しみにしていて下さい。

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日本で実験してみましたコーナーNo.2:播種と同時にYara化成肥料を表面施肥しても濃度障害を起こさずに生育するか?

日本で実験してみましたコーナーNo.1 :アブラナ科作物にはロケットスタートが重要

金峯浩(明京商事株式会社)

明京商事㈱の親会社である「日東エフシー株式会社」に勤務して30年余り。 
末端農家に対する栽培技術指導(特に施肥技術の指導)、栽培や肥料に関する講習会の講師を務め、新商品開発、肥料の肥効試験等の業務に携わった後、現在は主に明京商事株式会社の栽培アドバイザーとして北海道を中心とする全国各地で農家様と密に対話しながら活動をしております。

Yara社が掲げる“生産者中心 Farmers-Centric”の理念に共感して、生産者様が
Yara社をはじめとする様々な取扱商品を使って頂いた際に満足して頂ける為に
どのようなアプローチをすれば良いのかについて考えながら様々な提案をして
生産者様の良き相談相手になれるよう業務に取り組んでおります。

今後“GRWRSに掲載されているYaraの海外事例紹介記事の内容を参考にして栽培試験を実施。栽培を日本の環境で行った場合の率直な感想と気付いた点を分かりやすく生産者様に伝える事が出来たらと思っております。

また栽培現場にてお会いする事もあると思いますので今後共よろしくお願いします。

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