農業は、農地があってはじめて成り立つものです。そのため、「農地法」は、農地の保護という観点から、農地の売買には、農業委員会の許可を必要としています。農業委員会は、月に1回しか開かれません。そのため、提出書類の修正を求められたりして許可が出ないと、最低1ヶ月は待たされることになります。
農地売買の許可条件は下記の4項目となります。
- 農地の全てを効率的に利用すること
- 農作業に常時従事すること(年間150日以上)
- 農地の面積の合計が50アール以上(北海道の場合は2ヘクタール以上)となること
- 地域と調和して農業を行うこと
Ⅳについてはたとえば、水田地帯でトマトの栽培を計画したり、共同で農薬を散布している地域で無農薬栽培を計画している場合は、地域との調和を乱すので、条件を満たさない可能性が高いです。
新規参入者の場合は、地元の農家さんとは異なり営農の実績がないため、Ⅰ~Ⅳの条件を満たすかが不透明です。そこで、「営農計画書」を提出して、条件を満たすことを説明する必要があります。新規で農業を始める場合、最初から農業だけに集中したり(Ⅱ)、大規模な農場を経営すること(Ⅲ)は困難です。そのため、農地法は、農業への新規参入の障害になっていると言われることがあります。
綾部薫平(しぶや総和法律事務所)
1977年横浜市生まれ。2001年東京大学法学部卒。2013年しぶや総和法律事務所開設し、代表に就任。2015年からG-FACTORY株式会社(マザーズ上場)の社外監査役を兼務。注力分野は一般企業法務、不動産、相続・事業承継など。訴訟など従来の弁護士業務にとどまらず、法律を出発点に関与先企業の経営課題の改善にも取り組む。「詳説不正調査の法律問題」(弘文堂 共著)、「弁護士が悩む不動産に関する法律相談」(日本加除出版 共著)など著書多数。セミナーや社員研修の講師も務める。 ウェブサイト:https://www.sowa-law.com/ |