春の施肥が収量を増やす8つの理由

春に施肥すると穀物の収量が増加することが複数の実験から分かっています。

秋ではなく春に施肥した方が良い理由が8つあります。

1.作物が栄養素を最も必要としているときに新鮮な栄養素を与える

「春のスターター」肥料であるNPKS(N:窒素・P:リン酸・K:カリウム・S:硫黄)配合肥料を春一番に施肥することによって作物に新鮮な栄養素を供給することが出来ます。地温が上がり作物が生育を始めて栄養が必要となったときにすぐに栄養素を取り込める状態となります。 これは作物が栄養素を最も必要とするときにすぐに取り込める状態で肥料から供給される栄養素が土壌中に配置されていることを意味します。 このことによって作物は春先に最大限に生育し、肥料投入の投資収益率を高めることに繋がります。

2.春のNPKSは収量を増加させる



リン酸、カリウムの施肥時期と収量反応
秋撒き小麦(Winter Wheat)と秋撒き大麦(Winter Barley)での試験
縦軸:収量(トン/ha)
左棒グラフ:リン酸とカリウムを秋、窒素と硫黄を春に分施した場合
右棒グラフ:窒素、リン酸、カリウム、硫黄を春に同時施肥した場合

春に同時施肥したNPKSは秋と春に分施した場合と比べて、小麦および大麦の収量反応が良くなることが示されています。
NIAB / TAG(英国の農学研究所)が行った試験では、NPKS配合肥料を春に施肥した方が、秋と春に分施するよりも秋撒き小麦と秋撒き大麦の収量が平均で0.3トン / ha増加することが示されています。 2016年に英国王立農業大学(Royal Agricultural University)が行った試験では、この平均の倍以上の収量となる1トン/haが秋撒き小麦で増加することが示されております。

3.リン酸は春の根張りを良くするのに不可欠な栄養素

リン酸(P)には多くの植物の代謝プロセス、酵素の活動、さらに重要なことに根の発達を促す成長エンジンの役割があります。そのため植物が土壌から栄養素を吸収するために不可欠な存在です。 春に若い根の近くにリン酸を与えることでしっかりとした根圏が形成されます。その結果品質と収量の双方を生み出すために必要となる他のすべての栄養素に根からアクセスできるようになります。P(リン酸)とK(カリウム)が作物に必要となる時期に作物が吸収できる状態になっていない場合は、土壌の肥沃度が時間の経過とともに落ちることによる影響と相まって潜在収量(potential yield)を下げる要因となることに注意する必要があります。

4.カリウムは春の成育期に需要がピークになります



秋撒き小麦における栄養素別吸収量の変化
縦軸:各栄養素の吸収量(kg/ha)
横軸:月
N:窒素 P:リン酸 K:カリウム S:硫黄

春にはナタネなどの作物は急速な成長期を迎え、その間にいくつかの栄養素特にK(カリウム)の要求量はピークに達します。 カリウムは収量を上げるための重要な栄養素であり、病害から作物を保護するためにも役立ちます。 ナタネではK(カリウム)の需要は12kg / ha /日を超える場合があり、3t / haの収量を確保しようとする場合開花終了時までに酸化カリウム(K2O)の換算で最大300kg/haが必要となります。 小麦の場合はK(カリウム)の需要は10kg / ha /日を超える場合があり、開花終了時までに酸化カリウム(K2O)に換算して合計で最大250kg/haが必要になります。 このことを考慮するとP(リン酸)とK(カリウム)を「春のスターター」複合化成肥料として施肥することは、秋に単肥として個別に施肥する従来の方法よりも理にかなっています。

5.植物は窒素を使用するために硫黄を必要とする

硫黄はすべての作物に必要であり、植物タンパク質、アミノ酸、一部のビタミンと酵素の形成に重要な役割を果たしています。英国で行った2011年から2016年までの土壌と葉組織分析結果では、小麦とナタネの両方を栽培している圃場での硫黄量は100%に近い割合で欠乏していることが分かりました。また窒素(N)と硫黄(S)は植物体内でタンパク質を形成するための重要な構成要素となっています。窒素と硫黄は同時に特定の比率で与える必要があり、春が理想的なタイミングとなります。

6.硫黄-「少しずつ回数を分けて」が原則

硫黄は植物内での移動性が低いため3月、4月、5月にかけて窒素施肥と併せて少量を何回かに分けて施肥するのが効果的です。 こうすることによって春の急速な生育時に硫黄を取り込むことが出来るようになり流亡のリスクが軽減されます。 推奨される硫黄の施肥量は小麦などの穀物では三酸化硫黄(SO3)の換算で45〜50 kg / ha、ナタネなどの油糧種子では同じく50〜75 kg / haとなっています。

7.作物の栄養は雑草の防除、失われたバイオマスの回復の役割もある

雑草の防除が問題となる場合、春の作物の栄養は耕種的防除法と並んで一定の役割を果たします。 作物を健康的に生育させることによって雑草の介入を減らすことができます。 NPKS施肥とともに葉面散布を生育初期に行うことで春先の湿った土壌、耕起不足で空気不足気味の土壌、地温が低い土壌など生育に悪影響を受け易い作物に対して、失われたバイオマス(植物としての生物量)を回復するのに役立ちます。

8.土壌分析の重要性

作物の成長が速い春にはどの栄養素が不足しても、足りている他の栄養素の効能にも悪影響を及ぼします。 土壌養分から供給される栄養素と作物がその時に必要としている栄養素の需要と供給のバランスを取る栽培管理方法は、春を含めて生育シーズンの間、常に重要となります。特に作物の成長が早い春は不足している栄養素によって損失を受けるリスクが高い分、土壌分析の重要性はさらに高くなります。土壌分析によって作物が要求する栄養素の需給バランスを測ったうえで施肥を行うことで、作物の生育には利用されない栄養素(肥料)の投入という無駄を省くことにも繋がります。

気温・地温の低い春先に特に効果を発揮する硝酸態窒素ベースのYaraの化成肥料のご紹介

リン鉱石に硝酸をかけてリン酸成分を抽出しているため、リン酸の肥効が長持ちし、スラリー製法のため全ての粒に成分がバランスよく配合され、機械散布にも最適な肥料です。

Yaraの化成肥料・硝酸カルシウム肥料はどの様に作られていますか?

YaraMila コンプレックス 217
12(うち硝酸態窒素5)-11-17 + 20% SO3+微量要素 – NPKが一粒一粒に配合された高度化成肥料。苦土と硫黄に加えて微量要素も入っており、元肥・追肥として露地・ハウス栽培作物に幅広く使えるオールラウンド肥料です。

YaraMila コンプレックス L366
23(うち硝酸態窒素11)-6-6 + 可溶性カルシウム4.85% –即効性の硝酸性窒素と肥効が長続きするアンモニア性窒素がバランス良く配合されているL型肥料です。気温・地温が低く窒素が効きにくい時期に特に効果を発揮します。

YaraMilaコンプレックスN555
15(うち硝酸態窒素6)-15-15+可溶性カルシウム6%- NPKがバランスよく配合されたオールラウンド肥料です。

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本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

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