イチゴの品質に影響を与える要素

イチゴの果実はおよそ90%の水分と10%のTSS(Total Soluble Solids全可溶性固形物)で形成されており、葉酸、カリウム、食物繊維、マンガン、抗酸化物質を豊富に含んでいます。
果実にはビタミンCが多く含まれており、1日に10個の果実を摂取することで推奨される摂取量をほぼすべて満たすことができます。 主な可溶性糖成分はグルコースとフルクトースです。 主な酸味はクエン酸です。 イチゴの風味がこの果物の重要な特徴となっており、果実の甘さ、酸味および香りが絶妙に絡まってつくられています。 風味が詰まった果実はTSSが高く、適度な酸味があります。
最高品質の果実は大きさが均一で力強い紅色で光沢があります。ジューシーで強い香りを保ち果実表面にカビや傷がないことも重要と要素となります。品種の選択は非常に重要であり、それぞれの品種によって独特の形、大きさ、味、食感を持っています。 新鮮なイチゴはヘタと茎の一部も一緒に収穫されそのままの状態で保存されます。サイズも重要ですが大きすぎると梱包や輸送が困難になります。 果物の品質のわずかな違いが価格や等級に大きな影響を与える可能性があるため、保存期間の長い高品質の果実が収穫できるように栽培することに加えて収穫後の保管・維持にも注意が払われて然るべきです。
品種の選択は特に重要であり、生産者は市場のニーズに最も適合した品質特性を持つ耐性品種を選択するべきです。 土壌汚染を最小限に抑えるために適切なマルチまたは栽培システムを使用することは高品質を保つうえで重要です。 良好な衛生状態を保つことと適切な時期に殺菌剤や農薬を散布することが、害虫や病害にやられる危険性を減らすために重要となります。 また適切な灌水によって果実へ良好な水と栄養素の送り込みを確保し成長を最大限にするのに役立ちます。 管理された二酸化炭素環境を利用した冷蔵保管および輸送は、摘み取った果物の商品価値を最大化するのに役立ちます。 その前段としてバランスの取れた良好な栄養を与え、果実の糖分と酸度のバランスを保ち、香りと風味を良くすることがありますが、それと同時に摘み取り後の梱包や輸送のハンドリングにも耐え、少しでも長い保存期間を保てるようにすることも重要となります。

各栄養素とイチゴの品質の関係

多くの必須栄養素は、品質を向上させるためそれぞれの特定の役割を持っています。
カリウム – 果実糖の増加、酸度の増加、および味の改善に重要な役割を果たします。
窒素(特に硝酸性窒素) – 開花期から着果までの間一定の割合で使用されます。この時期の窒素は果実の腐敗にはつながらず味と酸味を維持するために使われます。
カルシウム – 果物の均一性、健康、そしてより長い保存期間を維持し、ハンドリング時のダメージを軽減するのに不可欠となります。
ホウ素 – カルシウムの効果を高め果実強度を維持するのにも役立ちます。

ホウ素(B)の役割

ホウ素は果物の品質において重要な役割を果たしています。供給不足になると果実が小さくなったり形が悪くなったりします。

ホウ素(B)とカルシウム(Ca)の葉面散布が収量・品質に及ぼす影響

左グラフ(1苗あたりの収量(g))
右グラフ(不良果実の形成率(%))



窒素(N)の役割

果実の成長中に過剰な窒素が吸収されると果実の品質に悪影響をもたらします。 病気に対する抵抗性を弱めたり、果実の軟化を早めます。 これによって貯蔵寿命を早め、腐敗しやすくなります。 また成熟が遅れたり、果実の形が変わったりして収穫量が減少する恐れがあります。

窒素(N)施肥が収量・品質に与える影響

棒グラフ(1苗当たりの収量:左目盛り(g))
折れ線グラフ(9日後に腐敗した割合:右目盛り(%))



Common practice: 慣行栽培    Fertigation: 潅水施肥

過剰な窒素(N)はまた炭疽病による腐敗も促進します。 潅水施肥により施肥した分が確実に作物に吸収され腐敗を促進する分になるべく使われないようにある程度コントロールすることは出来ますが、その場合でも窒素(N)率が高くなると病害がひどくなる可能性があります。

窒素濃度と炭素病発生の関係

縦軸:炭素素病発生の重症度:0症状なし~6苗全体が死滅)
横軸:窒素濃度(ppm)



濃青折れ線(リン酸・カリは高濃度)       薄青折れ線(リン酸・カリは低濃度)

 

本記事は、Yara米国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

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