柑橘における窒素の役割

窒素は作物の成長と発達に不可欠な酵素・ビタミン・葉緑素、その他の細胞成分を構成する主要な成分です。 したがって窒素は柑橘類の高収量を目指すうえで最も重要な栄養素の1つとなります。

窒素反応

最適な窒素量は樹齢によって異なります。 樹齢1年の木には通常0.11〜0.44ポンド(約50g~200g)の窒素が必要です。 樹齢5~6年の木は0.88-1.43ポンド(約400g~650g)の窒素が使用されます。 ただし年間最大果実生産量が2.2ポンド(約1kg)/木までのうちは窒素を集中的に施肥することが可能です。



縦軸:収量(ポンド(1ポンド=約453g)) 
横軸:木1本当たりの窒素量(ポンド(1ポンド=約453g))

着果数と収量

柑橘の生産性を長期間にわたって維持するためには収穫された果実によって取り除かれる分の窒素を補充するなど、年間を通しての施肥計画が必要となってきます。着果数の増加によって収量増となることが多いですが、窒素を使用することで果実の重量も改善されることが実験の結果で分かっています。



左グラフ
縦軸:着果数/木一本あたり
横軸:(左から) 慣行、11月、12月、1月、2月
右グラフ
縦軸:収量/木一本あたり(単位:ポンド 1ポンド=約450g)
横軸:(左から) 慣行、11月、12月、1月、2月

窒素形態

柑橘類は一部アンモニア態窒素を吸収しますが殆どは硝酸態窒素の形態で吸収します。窒素が一番取り込まれる時期は果実の生育期となります。 また窒素が硝酸アンモニウム(硝安:Ammonium Nitrate)としてではなく硝酸カルシウム(Calcium Nitrate)として適用された場合に最高の収量が記録されています(ブラジルのバレンシアオレンジでの試験)。

窒素形態による収量の差異(3年間継続使用した場合)



縦軸(収量:トン/1エーカーあたり(1エーカー=約0.4ha)
横軸(窒素量(ポンド/1エーカーあたり) 

灌水施肥と窒素効率

灌水施肥(Irrigation)を行うことで窒素の使用効率を上げることが出来ます。 フロリダでのバレンシアオレンジに関する実験では潅水施肥した方が、窒素使用効率が上がり収量も増加することが分かっています。

潅水施肥と潅水施肥でない場合の収量差



縦軸(収量 箱数/1エーカーあたり(1エーカー=約0.4ha)
横軸(窒素量(ポンド/1エーカーあたり) 
irrigation(潅水施肥) No Irrigation(潅水施肥でない)

窒素と果実品質-フロリダ州のオレンジでの実験

収量を増やすために窒素を過剰に使用すると果実の品質に悪影響を与える可能性があります。 TSS(Total Soluble Solids 全可溶性固形物含量:甘味の指標)に多少影響するとともに窒素量が多くなると酸度が増します。そのため窒素量が増えるにつれて甘味/酸味値が低くなります。さらに果実のアスコルビン酸含有量も低くなります。

窒素使用量の違いによるTSS(甘味)と酸味の変化



左縦軸:TSS(全可溶性固形物含量)(%)
右縦軸:酸度(%)
棒グラフ(左から右)「:窒素量(1エーカー当たりの窒素量(ポンド))
濃青:TSS(甘味の指標)  淡青:酸味
折線グラフ:甘味/酸味値

窒素と皮の厚さ

適切な窒素量を含む果実は適度に皮が厚くなり、収穫時・収穫後の機械的損傷や病害発生のリスクが低くなります。 窒素が多すぎると皮が粗くなりジュースにしたときの生産量と果実のサイズが減少します。

窒素施肥の一般的なガイドライン

最適な窒素反応は木の樹齢によって異なります。 収穫された果実によって除去される窒素を補充して長期的な生産性を維持するために、年間を通しての窒素施肥計画が重要なります。窒素は通常、年間3~5回に施肥量を均等に分けて以下のタイミングで行うのが理想的です。

柑橘類の各生育ステージにおける窒素の役割
開花期 収量と木の生産性を高める
着果期 葉の成長・開花・着果を維持する
果実肥大&成熟期 収量を維持し、皮の厚さと果実の酸味を改善する
収穫後 葉の紅葉・落葉を促す

YaraのCN(硝酸カルシウム)肥料の柑橘施肥の効用

以下の動画ではYaraのCN(硝酸カルシウム)肥料がAN(硝酸アンモニウム(硝安))よりも優れている理由を説明しています。Yara北米の技術普及役員のビル・イースターウッド博士が柑橘へのCN(硝酸カルシウム)施肥の研究結果と効用について説明します。

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本記事は、Yara米国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

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