春にNPKS化成肥料施肥を検討してみませんか?

春にNPKS(N:窒素、P:リン酸、K:カリ、S:硫黄)化成肥料施肥は、英国で伝統的に行われている秋にPK(P:リン酸+K:カリ)肥料を施肥するよりも効果が高いことが数々の実験で実証されています。それではなぜ多くの生産者が春ではなく秋にリン酸とカリを施肥するのでしょうか?




秋にリン酸とカリウムを施肥する従来のアプローチは、0-24-24、0-20-30などのリン酸カリ肥料またはTSP(過リン酸石灰)やMOP(塩化カリ)など単肥を使うものでした。 この戦略は土壌の肥沃度レベルの維持、場合によってはさらに肥沃度を上げることを念頭に置いた結果です。
この従来の施肥設計は栄養素の供給が不十分なために作物の生育がリスクにさらされており、ある程度の肥料投入を行なわなければならない圃場では有効な方法です。
しかし現在殆どの圃場では初期成育に必要な作物の養分需要を満たすのに十分な量のリン酸とカリが土壌に蓄積されているため、肥培管理の視点を作物がいつ成分を最大限必要としているか?ということに視点を切り替えることが重要です。
この視点の変更を行うとすぐに従来の伝統的な方法では作物の成分要求を満たしていないことが分かり、肥培管理の戦略を変える必要性があることを浮き彫りにします。


リン酸とカリの施肥タイミングと収量反応
(左グラフ:秋撒き小麦、右グラフ:秋撒き大麦)
縦軸(1haあたりの収量(㌧)
横軸:左(濃青):リン酸・カリを秋に、窒素・硫黄を春に分施
    :右(淡青):NPKS(窒素、リン酸、カリ、硫黄を春に施肥)

春にまとめてNPKS(窒素、リン酸、カリ、硫黄)を施肥した場合、秋にリン酸・カリ、春に窒素・硫黄に分けて分施した場合よりも収量反応が良くなることが分かっています。
NIAB / TAG(※英国ケンブリッジに1919年に創設された国立農学・植物学研究機関)による試験では、NPKS化成肥料を春に施肥すると秋撒き小麦と秋撒き大麦の収量が平均で0.3t / ha(0.12t /エーカー)増加することが示されています。 2016年に王立農業大学(RAU、サイレンセスター)が行った最近の試験では、小麦の収穫量が1トン/ヘクタール増加し、従来の定説の2倍以上の収量反応の結果が示されました。

では作物の栄養素の要求はいつ最大になるのでしょうか。

下のグラフは秋撒き小麦の栄養素需要の変動を示したものです。NPKS(N:窒素、P:リン酸、K:カリ、S:硫黄)すべての栄養素で作物が吸収を開始するのは2月以降となることを明確に示しています。 特に3月、4月、5月は、作物が生育成長する最重要時期であり、この期間に吸収した栄養分が最終的に収穫量に繋がってきます。


秋撒き小麦の各栄養素の吸収グラフ(kg/ha)
縦軸(1haあたりの栄養素吸収量(kg)
横軸:定植(Aug.8月)以降の月別栄養素吸収量
(N:窒素、P:リン酸、K:カリ、S:硫黄)

春にはナタネなどの作物は急速な生育期を迎え、その間にいくつかの栄養素、特にカリ(K)の要求量が増加します。 それは収量を増やすための重要な要素であり、病害から作物を守るのにも役立ちます。
ナタネのカリの要求量は1日当たり12kg / ha /日を超えることもあり、3t / haの作物の場合開花終了までに合計で最大300kgの酸化カリウム(K2O)が必要になります。 小麦の場合はカリノ要求量が1日当たり10kg / ha /を超えることがあり、開花終了までに最大250kgの酸化カリ(K2O)が必要になります。
したがって春のスターター肥料としてリン酸(P)とカリ(K)を含んだ化成肥料を使うことは、秋に単肥として使うよりも間違いなく理にかなっています。

反対に作物の栄養要求量が最低になるのはいつなのか?

作物の栄養要求量が春に最大になることを確認したら、次に土壌からの栄養分供給を考えることが重要です。これはつまり作物の栄養要求量と土壌からの栄養供給量を同期させ、要求量と供給量になるべくロスが出ない様にすることを意味します。 問題はどのような要因が土壌養分供給量に影響を与えるのか?ということです。 そこには土壌の物理的状態とその特性(粘度、有機物レベル等)、またpH、化学組成、水分、温度など、多くの要因があります。 これらの要因は大きく分けて以下の5点に集約することができます。
•土壌中の粘土と腐植土が多いほど、養分保持能力が高くなる。
•有機物量の増加、栄養素の可用性を改善する。
•カルシウム、鉄、アルミニウムが土壌中に多いと必須栄養素と固着し、作物が吸収出来る量(可用性)が低下する。
•作物の栄養素吸収量を高める最適なpHは約6.4。
•冷たく湿潤した土壌は栄養素の可用性が最も低い。
上記のうち上位4点の要因は圃場の場所によって程度が異なりますが、最後のポイント(冷たく湿潤した土壌)は場所に関係なく当て嵌まります。つまり北半球ではほとんど全ての圃場で冬から早春にかけての時期が土壌からの栄養素の供給が最低になります。

一般的な問題の解決策は何になるか?

これらの事実を確認後、戦略上最も重要な次のステップは、適切な解決策をもって問題に対処することになりますが、この解決策は非常に単純です。 必要なのは栄養素の施用タイミングを吟味し機能を備えた製品を選択することだけです。
・まず主要栄養素(N:窒素、P:リン酸、K:カリ、S:硫黄)の供給タイミングがが2月中旬から5月までの月を対象としていることを確認してください。
・作物の栄養素吸収が特定の成分に偏っていない肥料を選択してください。 MAP(リン酸1安)、DAP(リン酸2安)、TSP(過リン酸石灰、MOP(塩化カリ)など特定の栄養素に偏っている肥料ほど、その他の栄養素の供給範囲は低くなります。
•作物の栄養素要求期間をカバーする肥効期間がある肥料を選択してください。

肥料の選択にあたって役立つ検討事項がいくつかあります。

• 早期播種に成功した秋撒き小麦は春先の立ち上がりから作物の生物量(バイオマス)が良好になる可能性が高く、通常は50 kg / haの窒素が必要になります。窒素以外に必要とされるリン酸、カリ、硫黄をバランスよく供給しながらも、窒素の散布量を最小限に抑え窒素過多とならない肥料を選択してください。                                ⇒Yara推奨肥料: コンプレックスN555、コンプレックス217
• 秋撒き小麦で播種が遅れた場合は定着期間が短いために作物の生物量(バイオマス)が低くなることが多く、春先の窒素要求量は70 kg N / ha程度必要になります。 リン酸、カリに比べて窒素成分が高いL型の肥料がお薦めです。
⇒Yara推奨肥料: コンプレックスL366、スプリンター

春にNPKS(N:窒素、P:リン酸、K:カリ、S:硫黄)化成肥料を施肥するとどのようなメリットが期待出来るか?

1. 作物の栄養分要求量と施肥後の土壌から作物への栄養分供給を同期させることが出来る。
2. 主要栄養素を状況に応じてバランスよく、肥効を計算して施肥出来る。
3. 従来の施肥体系(※英国 秋にリン酸・カリ、春に窒素・硫黄に分けて分施する)よりも収量が増加します。
NIAB / TAG(※英国ケンブリッジに1919年に創設された国立農学・植物学研究機関)とYaraによる試験では、NPKS化成肥料を春に施肥すると、秋撒き小麦、秋撒き大麦で平均0.3t / haの収量が増加することが示されています。
2016年に王立農業大学(RAU、サイレンセスター)が行った試験では、上記試験よりも2倍以上の収量反応が見られ、小麦の収穫量は従来の施肥体系よりも約1t/ha増加しました。
4. 秋のリン酸、カリ肥料の購入、施肥をなくすことで、面積(ha)あたりの肥料コストを削減し、キャッシュフローも改善します。

日本で購入できるYaraのNKPS化成肥料

YaraMila コンプレックス217
12-11-17 + 20% SO3 – NPKが一粒一粒に配合された高度化成肥料。苦土と硫黄に加えて微量要素も入っており、元肥・追肥として露地・ハウス栽培作物に幅広く使えるオールラウンド肥料です。

日本で購入できる他のYara化成肥料

YaraMilaコンプレックスN555
15(うち硝酸態窒素6)-15-15+可溶性カルシウム6%- NPKがバランスよく配合されたオールラウンド肥料です。

YaraMila コンプレックス L366
23(うち硝酸態窒素11)-6-6 + 可溶性カルシウム4.85% –即効性の硝酸性窒素と肥効が長続きするアンモニア性窒素がバランス良く配合されているL型肥料です。気温・地温が低く窒素が効きにくい時期に特に効果を発揮します。

YaraMilaスプリンター
20.5(うち硝酸態窒素9.5)-7(うち水溶性リン酸4.5)-14(水溶性カリ)+カルシウム3%配合の化成肥料。小麦などの穀物にも適しておりますが、窒素とカリウムの要求量が高いビートにも最適な肥料です。

Yara製品の詳細はこちらから

 

本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

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