リン酸二アンモニウム(DAP)がリン酸肥料のベストの選択ではない理由

リン酸は植物の生育への影響という点で、窒素に次いで2番目に重要な栄養素と見なされています。 土壌中のリン酸が作物に実際に利用されるかどうかについては土壌のpHなど多くの要因がありますが、その中でもリン酸の形態は一番影響を与える可能性があります。

リン酸管理の従来のアプローチでは、リン酸二アンモニウム(DAP)、リン酸一アンモニウム(MAP)、過リン酸石灰(TSP)などの単肥を使用するか、0-20-30などのリン酸カリ肥料を使用していました。 ただしすべてのリン酸が同じであるとは限らず、土壌中でのリン酸の作用に大きな影響を与える可能性があるため、これはベストの選択ではない可能性が多分にあります。

リン酸塩の形態- 単純にリン酸を与えれば良いということではないのか?

リン酸肥料に含まれているリン酸塩(P)には実際にはさまざまな形態がありそれらはすべて性質が異なっています。それらがどうやって作物に取り込まれるのかを知っておくと便利です。

オルトリン酸(Ortho-P)は、DAP、MAP、過リン酸石灰(TSP)などのリン酸単肥肥料およびほとんどのNPK複合化成肥料に含まれています。 オルトリン酸は作物がすぐに利用できるため、作物はすぐにオルトリン酸を吸収します。作物が一度にすべてのオルトリン酸を吸収する能力を持っていればいいのですが、早春の時点では根がすべてのオルトリン酸を吸収出来るまでには育っていないことが殆どです。残念ながらオルトリン酸は作物が吸収しないと土壌中の鉄またはアルミニウムイオンに付着したり、カルシウムイオンとともに沈殿したりするため、植物が利用できなくなる可能性があります(固着)。 しかも固着は非常に早く起こります。通常オルトリン酸は施肥後2週間程度で固着してしまうため、施肥した分量のうち最大でも40%程度しか作物が利用することはできません。

ポリリン酸(Poly-P)はオルトリン酸に変化する前のリン酸塩の形態です。ポリリン酸は作物が利用出来る様になるのにオルトリン酸に分解される必要があるため、作物が吸収できるようになるまでに少し時間がかかります。 これは逆に言えば土壌に浸透しやすく、すぐには固着されないことを意味します。 したがってポリリン酸の入ったリン酸肥料は固着することなく、リン酸の肥効が長続きします。

リン酸二カルシウム(DCP)はリン酸塩の最終形態です。 リン酸二カルシウムは土壌に固着されにくいため、長期間にわたって作物にリン酸を供給することができます。 リン酸二カルシウムが作物に吸収されるためには植物の根から出る根酸の作用が必要となります。根酸は作物が土壌中の栄養素を探しているときに植物の根から滲出するため、リン酸二カルシウムは作物が根を伸ばして根酸の作用で取り込む様になるまで固着されずに土壌にとどまることができます。

さまざまな形態のリン酸塩が混じっていると肥効が持続する

通常作物が成長し始めると、継続的な成長のために土壌中で吸収できる形態のリン酸塩を必要とします。 土壌中のリン酸塩が作物に利用可能となるためには土壌のpH、またアルミニウム、鉄、カルシウムなどの他の栄養素、土壌の水分、地中温度など多くの要因に左右されます。 したがって作物が活発に生育している時期にリン酸塩が作物に利用可能な状態となっていることが重要になります。

リン酸を長い間作物に利用可能な状態にしておくためには、さまざまな形態のリン酸塩を組み合わせることが一番簡単な方法になります。オルトリン酸は即時に作物に取り込まれる形態(取り込まれない分はすぐに固着する)、リン酸二カルシウムは作物が必要とするときに根酸の作用で取り込まれる形態、ポリリン酸は固着するまでに時間が掛かるためオルトリン酸より肥効が長い形態です。Yaraの化成肥料はこの3種類の形態のリン酸塩が配合されています。リン酸の肥効を長続きさせる「P-Extend」はYaraの複合化成肥料“YaraMilaⓇの大きな特徴です。



秋撒き小麦のリン酸吸収曲線
縦軸:リン酸吸収量(kg/ha)
横軸:月


YaraMilaⓇ(Yara化成肥料のブランド名)の肥料にはすべて3種類の異なる形態のリン酸塩を含んでいます。つまり成育期間中を通じて異なった形態のリン酸塩を作物に供給できるため、リン酸の肥効が持続します。

3種類のリン酸塩が配合されたYaraの化成肥料のご紹介

リン鉱石に硝酸をかけてリン酸成分を抽出しているためリン酸の肥効が長持ちし、スラリー製法のため全ての粒に成分がバランスよく配合され、機械散布にも最適な肥料です。

Yaraの化成肥料・硝酸カルシウム肥料はどの様に作られていますか?

YaraMila コンプレックス 217
12(うち硝酸態窒素5)-11-17 + 20% SO3+微量要素 – NPKが一粒一粒に配合された高度化成肥料。苦土と硫黄に加えて微量要素も入っており、元肥・追肥として露地・ハウス栽培作物に幅広く使えるオールラウンド肥料です。

YaraMila コンプレックス L366
23(うち硝酸態窒素11)-6-6 + 可溶性カルシウム4.85% –即効性の硝酸性窒素と肥効が長続きするアンモニア性窒素がバランス良く配合されているL型肥料です。気温・地温が低く窒素が効きにくい時期に特に効果を発揮します。

YaraMilaコンプレックスN555
15(うち硝酸態窒素6)-15-15+可溶性カルシウム6%- NPKがバランスよく配合されたオールラウンド肥料です。

YaraMilaスプリンター(2021年春新発売)
2021年春北海道先行販売。春先のスターター肥料として最適。潮解性に優れ、低温下でも作物に速やかに吸収され初期成育を良くします。

Yara製品の詳細はこちらから

 

本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

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