寒い時期の窒素源と施肥タイミングについて

小麦などの穀類作物への最初の窒素施肥は収量に大きく左右します。そのため最初の窒素はどういう形態のものにするか?またそのタイミングについては?という2つの設問は正しい選択をするうえで非常に重要になります。特に気温・地温とも低い寒い時期となればなおさらです。

最初の窒素の選択はリスクとリターンのバランスを取ることが重要

穀類作物に対しての春先最初の窒素施肥は収入に直結するため熟考する価値があります。小麦の場合は窒素量1kgに対して平均で33.8kgの全粒収量を取ることが投資に対する健全なリターンの指標となります。
この最初の窒素施肥は収穫を成功に導くための基盤を作るために最も大切なことです。このことを考えると経営的な視点をもつことが非常に重要です。つまり最大のチャンスを最大のリスクにしてはならないということです。春先最初の窒素施肥がいかに重要であるかを理解することが正しい選択を行うための助けとなります。

秋撒き小麦1ha当たり窒素100kg投入に対する収量反応(英国での実験)



縦軸:収量反応(単位:トン/ha)
横軸:年度

バイオマス(生物量)が潜在的収量(yield potential)を左右する

冬を越した秋撒きの小麦は新しい葉の成長と分げつを続けます。新葉が発生するたびに根も成長します。一般的に地上部のバイオマス(葉と茎の生物量)の50~60%が穀類の収量に転換されます(収穫指数)。もちろん地下部のバイオマス(根の生物量)も暖かくなった後の干ばつ、日照不足などへの耐性を高めるだけでなく、土壌中の栄養素の吸収効率を高める役割もありますので同じくらい重要です。
しかしながらバイオマス(生物量)の増加はある時点を境にストップする為、その期間(栄養成長期)は限られています。栄養成長から生殖成長に切り替わりますが、トータルバイオマス(総生物量)=穀類の収量に直結する潜在収量(yield potential)は栄養成長期終了の段階ですでに大勢が決してしまっています。

窒素はすぐに植物に取り込まれる必要がある

栄養成長期が収量の元になる基盤をつくる期間であることが分かれば、窒素形態、窒素量と施肥タイミングを中心に据えて考えることが重要だということもお分かりになるかと思います。窒素の形態として作物が必要とするときに吸収される状態になっているか?が重要なポイントであり、これが作物の健全な生育・成長を阻害するリスクの削減につながります。

硝酸態窒素が主要窒素源となっているYaraMila(Yaraの化成肥料ブランド)は尿素などの窒素単肥が作物に吸収される形態となる窒素に変換するまでに時間が掛かるのに対して、すぐに作物に吸収されます。窒素が作物に吸収される形態となるまでには土壌バクテリアによる分解など生物学的なプロセスが必要となりますが、そのプロセスには幾つもの要因があり、その中でも地温は特に鍵となる要素です。地温が低いと生物学的なプロセスに時間が掛かるため春先最初の窒素がすぐに作物に吸収されるものか?ということが折角の窒素投入を無駄にしないために重要な選択となります。

地温が低い時期の尿素は作物栄養としての窒素として吸収されにくい

尿素が硝酸態窒素に変換されるまでには2つのステップが必要です。つまり尿素→アンモニア態窒素、アンモニア態窒素→硝酸態窒素の2つのステップです。それぞれのステップに少なくとも数日から数週間、地温が低い時期の場合はさらに変換に時間が掛かります。作物が最も栄養を成長とする時期に干ばつが重なることもあります。
経営の観点からみた最善の決断には十分な情報が必要です。ダーウインの進化論にもあるように環境にあわせて適応することが生き残るための秘訣です。このことを念頭において判断の材料とすることで、最良の方法(best practice)をどうやって選択するのかが潜在収量(yield potential)に影響を与えるとともに潜在性に気付くことにもなります。
硝酸態窒素ベースの肥料は作物にすぐに吸収される窒素形態となっており時間的のロス、窒素変換時に失われる効率のロスが少ない肥料です。大きな根域を作ることで穀類の栄養吸収効率を上げることにもつながります。

硝酸態窒素ベースのYaraの化成肥料のご紹介

リン鉱石に硝酸をかけてリン酸成分を抽出しているため、リン酸の肥効が長持ちし、スラリー製法のため全ての粒に成分がバランスよく配合され、機械散布にも最適な肥料です。

Yaraの化成肥料・硝酸カルシウム肥料はどの様に作られていますか?

YaraMila コンプレックス 217
12(うち硝酸態窒素5)-11-17 + 20% SO3+微量要素 – NPKが一粒一粒に配合された高度化成肥料。苦土と硫黄に加えて微量要素も入っており、元肥・追肥として露地・ハウス栽培作物に幅広く使えるオールラウンド肥料です。

YaraMila コンプレックス L366
23(うち硝酸態窒素11)-6-6 + 可溶性カルシウム4.85% –即効性の硝酸性窒素と肥効が長続きするアンモニア性窒素がバランス良く配合されているL型肥料です。気温・地温が低く窒素が効きにくい時期に特に効果を発揮します。

YaraMilaコンプレックスN555
15(うち硝酸態窒素6)-15-15+可溶性カルシウム6%- NPKがバランスよく配合されたオールラウンド肥料です。

Yara製品の詳細はこちらから

硝酸態窒素ベースのYaraの化成肥料のご紹介

窒素単肥がほんとうにベストな選択なのか?

土壌中の窒素の変化

窒素を理解しよう

窒素の使用効率-いかにして改善するか

春の当用期に使う窒素源と施肥タイミングについて

窒素のリターンを最大限化する

 

本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

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