春先に寒い天候が続く場合は作物が早い時期に窒素を必要とする可能性が高いことを意味しますが、その年の潜在収量(yield potential)から収量を落とさない様にするためには、春の当用期に使う肥料の窒素源と施肥タイミングの両方を考慮することが重要となります。
寒い気候の場合は肥料の無機化のスピードが遅くなります
例年より春先に寒い天候が続く場合は、例年と無機化する量・スピードが前年の同じ時期とは違っている可能性があります。 これが意味するところはその年の潜在収量(yield potential)から実際の収量が減少しない様に例年より早い窒素施肥を必要とする可能性が高まったということです。
春の窒素施肥を考えるとき、肥料の効率を高めるためには窒素源と施肥タイミングの両方を考えることが重要となります。 最初の窒素施肥は作物が生育を開始するときには既に行われていることが望ましいですが、これは施肥するときの土壌の状態によって状況は異なってきます。
雪解け、土壌凍結等により圃場が水浸しになっている状態で土壌に窒素肥料を適用すると、通常脱窒が起きますので肥料効率の点では好ましくありません。 脱窒とは嫌気的条件を好む土壌細菌によって硝酸イオンが窒素ガスに変換されて窒素分が大気中に失われる現象です。 脱窒を防ぐ為には最初の窒素施肥を行う前に土壌条件が改善されるまで待つ必要があることを意味します。逆に言えば窒素施肥のタイミングが遅れることとなりますので、窒素がすぐに作物の根から取り込まれる形態になっているかどうかがより一層重要になってきます。
硝酸態窒素は作物にすぐに取り込まれる形態の窒素
窒素源を何にするか?は状況によって判断を変える必要があります。 一般的には硝酸態窒素が一番早く作物に取り込まれます。 それに対して例えば尿素を窒素源として使う場合には、それが作物に吸収される窒素態となるために最初にアンモニア態窒素に分解され、さらにその次に硝酸態窒素に分解される必要がありますので、作物に吸収される窒素態に変換されるまでに時間が必要ということになります。寒い時期は変換のスピードが遅くなりますので、変換するのに数週間かかることさえありますます。
特に緩効性の被覆尿素を使う場合は純粋な尿素よりも、硝酸化するためにさらに時間がかかりますのでこのことを念頭に入れておく必要があります。
春最初の施肥で窒素単肥を検討する場合は、硫黄成分をどうやって施肥するかを考える必要があります。硫黄分は流亡しやすいため1回で必要な硫黄分をすべて施肥することはお勧めできません。 硫黄施肥に対する最善のアドバイスとしては窒素と組み合わせたNS化成として施肥回数をなるべく分けて行うことです。
またBB肥料よりも複合化成肥料を使用した方が各栄養分を作物にまんべんなく与えるという点で効果的です。
Yaraの硝酸化成肥料(YaraMila®)のご紹介
本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。
Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~
Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。
また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。