チップバーンは、アブラナ科の作物を栽培する生産者が気をもむ生理障害です。収穫が近づいたときや収穫した後で発見されることが多いため、それまでの投資が台無しになりかねない厄介な障害です。チップバーンは、重なった葉の内側で発生するのでキャベツの場合はカットしてみないと分かりません。カリフラワーとブロッコリーの場合は、若い葉の先端に発生するケースが殆どです。
白菜、紫キャベツ、キャベツの巻き葉の内部に発生したチップバーン




アブラナ科作物におけるチップバーンの作物栄養
カルシウム
チップバーンは、カルシウムとホウ素、またはそのどちらかの欠乏に関連して発生することが多いです。この欠乏は、単に栄養素の供給が不足したために起こるだけでなく、水やりの管理不十分、栄養のアンバランス、根の成長阻害によっても発生します。また、空気中の湿度は蒸散に影響を与えるためカルシウムとホウ素の植物体内への取り込みを妨げる事となり、チップバーンを引き起こしやすくなります。これらの栄養素は、空気中の湿度が低いと蒸散が盛んになるのでそれに引っ張られて植物体内への取り込みも活発になりますが、いったん植物体内に取り込まれた後の体内間の移動(栄養が満ちている部位から栄養が不足している部位への移動)は湿度が高い方が促進されます。
カリとアンモニア態窒素の過剰施肥は、作物の生理バランスを崩すリスクがあり、これが原因でカルシウムの取り込みが妨げられて障害を悪化させる事があります。
銅
葉の縁に沿って黄班やチップバーンが発生し枯死する現象は、銅が不足している可能性があります。それは一般的に、一番若い葉の先端が焼けて萎れるという症状に現れます。欠乏状態が続くと葉が完全に黄ばんでカールし始めます。さらに症状が悪化すると葉の先端が枯死したり、巻いたり、ねじ曲がったり、白くなったりします。
さらに窒素の過剰施肥、特にカルシウムとカリの摂取とのバランスがとれていない場合は、これらの栄養素の供給が不十分となり、チップバーンが発生する可能性があります。
本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。