カルシウムはジャガイモにとってかなり重要な栄養素ですが、ジャガイモの品質に関する問題のほとんどは生育中にカルシウムを十分に補給することによって改善することができます。カルシウムは細胞壁の維持、健康な葉および塊茎の生育のために作物体内で必要とされる栄養素です。
カルシウムは塊茎の品質向上のために幅広い部分で役立ちます
ジャガイモで発生する主なカルシウム欠乏症は、塊茎内の褐斑として発現するケースが多いです。 生理学的には塊茎内の細胞が死ぬことで小さな茶色の斑点が生じる現象として説明出来ます。これは細胞壁のカルシウムの不足に直接関係しており、細胞壁に十分な強度がない状態で細胞増殖が起こると細胞自体が崩壊し壊死することで起こります。
カルシウムはいったん細胞壁に取り込まれると、再分配されないという性質があるため、新しい細胞が増殖するスピードにあわせてカルシウムを十分に補給し続けることが重要となります。すでに述べたようにカルシウムは細胞壁の強度を保つために不可欠な栄養素であり、細胞(特に皮の部分)に強度を与えます。そのためカルシウムを十分に補給することで皮目が良好な仕上がりになるだけでなく、収穫中、また収穫後の保管の時期に生じる物理的ダメージに対しても強くなるという効能があります。
その他に塊茎に影響を与える細菌性病害の予防にも役立ちます。表皮が丈夫になれば病害への耐性も強くなります。表皮に細胞が死んだ弱い部分があるとそこから土壌中の病害性細菌が入り込むリスクが高まりますので、皮を丈夫に保つことでそのリスクを減らします。ジャガイモの場合、必要とされる総窒素量の60〜70%を元肥として施肥することが一般的に推奨されますが、窒素必要分の残りはカルシウムとともに追肥で与えることが理想的です。Yara社の硝酸石灰肥料(窒素全量15.5%うち硝酸態カルシウムが14% +水溶性カルシウム26%)は、塊茎肥大開始期に400〜500kg / haを施肥することで100kg / ha以上のカルシウムを同時に供給することが出来ます。重要なポイントはカルシウムが施肥してすぐに作物に取り込まれる形態であるかどうか?です。カルシウムが作物に取り込まれる様になるまでに遥かに長い時間が掛かる炭酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、CAN(硝酸カルシウムアンモニウム)と混同しない様にしてください。カルシウムが即座に取り込まれる形態になっていないと塊茎肥大期に追肥したとしても、十分なカルシウム補給は出来ません。
ジャガイモには水溶性カルシウムが重要です
つまりカルシウム補給は施肥するタイミングの他に使用するカルシウムの原料にも注意を払う必要があるということです。石灰を与えていれば石灰には十分な量のカルシウムが含まれているのでカルシウムの補給は不要と誤解されていることが多いですが、殆どの石灰肥料は炭酸カルシウムがベースになっています。炭酸カルシウムは殆ど水に溶けないため生育期に施肥してもジャガイモはカルシウムを自由に十分に取り込めないということになります。
例えば一般的に言う石灰とは炭酸カルシウムのことです。炭酸カルシウム1kgを溶解するためには66,000リットルもの水を必要とします。このことはつまり作物がカルシウムを取り込める様になるまでに非常に長い時間がかかることを意味します。一方でYara社の硝酸カルシウム(YaraLivaⓇ)は1kgを溶解するのにたった1リットルの水しか必要としません。それはつまりカルシウムの溶解度が抜群に高いことを意味しています。
ジャガイモへのカルシウム補給の必要時期は塊茎肥大開始時期となりますが、作物がその時期にカルシウムをすぐに取り込めることが出来ることがその前提条件となっています。
Yara社の硝酸カルシウム(YaraLivaⓇ)を使用する理由
北アイルランドのアントリム県出身のジャガイモ生産者トーマス・マーシャルは、Yara英国のエリアマネージャーであるクロエ・カイルに、トロピコートを使ってジャガイモの品質を改善している理由を話します。
Yaraが推奨するジャガイモ用硝酸カルシウム肥料
YaraLiva™は硝酸カルシウムベースの肥料ですので、水に十分に溶け、即座にカルシウムが作物体内に取り込まれます。
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本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。
Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~
Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。
また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。