農地所有適格法人の議決権要件・役員要件の特例

特例の概要

農地所有適格法人については、これまでに何度も改正が行われてきました。今回、令和元年11月の農業経営基盤強化促進法が改正され、議決権要件や役員要件が緩和されています。この改正は、今後の農業法人の経営規模拡大や事業承継に大きな影響があります。

農地所有適格法人の4要件

農地所有適格法人になるためには、下記4つの要件をすべて満たす必要があります。

表1:農地所有適格法人の要件

要 件 内 容
法人形態要件 株式会社(譲渡制限があるものに限る)、合名会社、合資会社、合同会社、農事組合法人
事業要件 売上高の過半が農業(販売及び加工等を含む)
構成員・議決権要件 総議決権の過半が農業関係者
役員要件 役員の過半が農業(販売及び加工等を含む)の常時従事者(原則年間150日以上)である構成員(出資者)
役員又は重要な使用人の1人以上が農作業に従事(原則年間60日以上)
改正1 議決権要件の特例

これまで、法人が子会社に出資する場合には、農業関係者に含まれないため総議決権の2分の1以上の出資はできませんでした。今回の改正により、認定農業者である子会社が農業経営改善計画に親会社(農地所有適格法人に限る。以下、同じ。)からの出資に関する事項を記載して、市町村等の認定を受けた場合には、法人(親会社)が、子会社の総議決権の2分の1以上を出資することも可能となりました。

改正2 役員要件の特例

これまで、子会社が農地所有適格法人の要件を満たすために、親会社と子会社を兼務する役員が子会社の農業に年間150日以上従事する必要がありましたが、この常時従事要件が緩和されました。具体的には次の表で解説します。

表2:役員要件の特例

原 則 役員要件の特例
子会社への出資可能範囲 総議決権の2分の1は不可 総議決権の2分の1以上が必要
経営改善計画の作成及び市町村等の認定 親会社
子会社
兼務役員の子会社における役員及び構成員の条件 子会社の農業に原則として年間150日以上従事
子会社の構成員
子会社の農業に年間30日以上従事
子会社の構成員であることは求めない
親会社の役員が兼務可能な子会社の数 1社は兼務可能 2社以上の兼務が可能
改正の効果

今回の改正により、農地所有適格法人の完全子会社化(100%子会社)が可能となりました。今後、経営の拡大をすすめる農業法人の可能性が大きく広がります。また、第三者への事業承継や農業法人のM&Aが行われることも予想されます。
この改正により、日本の農業が抱える農事従事者の高齢化や後継者問題の解消のきっかけになることを願っております。

 

石井宏(石井宏税理士事務所)

東京都武蔵野市にある税理士事務所です。最寄駅はJR中央線・京王井の頭線の吉祥寺駅で、住みたい街ランキングの上位に選ばれる人気の駅です。井の頭公園など、自然や公園が多いことや商業施設や飲食店が充実しているのが特徴です。

現在、上場会社の関係会社からオーナー系中小企業、不動産オーナーなど、様々な規模の法人個人の税務、会計の関与をさせていただいております。また、資産税(相続・贈与・譲渡等に関する税金)に関する相談においても多数実績がございます。

農業の事業や法人化について、税務・会計分野のサポートをさせて頂きたいと思っております。(現状、農家や法人組織等を合わせた農業経営体数は一貫して減少していますが、農業経営体のうち、法人経営体数は増加傾向で推移しております。)農業を法人化した場合にはどのようなメリットがあるのか?デメリットはないのか?さらには将来の事業承継のビジョンまで、専門的な立場から経営者の皆様と共に考えていきたいと思います。

(日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格者)
(一般社団法人全国農業経営コンサルタント協会正会員)
ウェブサイト:https://141tax.com

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