GRWRS探訪 No.3 Pix4D 東京都渋谷区

-スマートシティからスマート農業を発信-

ビットバレー アメリカのIT企業集積地・シリコンバレーにあやかって渋谷を英語に直訳したビターバレー(Bitter valley)から名付けられたビットバレー。サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、ミクシー、GMOインターネットといったIT企業が数多く集まる街渋谷。
農業とは縁遠いと思われる渋谷にPix4D日本法人がある。
Pix4Dはスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)での研究から起業したドローン空撮や地上撮影から取得した画像のデータ処理ソフトを開発する会社。元々は有人のヘリコプターや衛星などでは接近できない森林の林冠部の測量や橋梁工事などの建設業の分野で使われていた技術が今は農業の分野にも転用されている。
ドローンというハードの急速な普及スピードに比べてドローンを有効活用化するソフトの普及が追い付いていないのが現状。 iPhoneを買ってもアプリを入れないとその機能をフルに活用できないのと同じ状況がドローンの世界でも起きている!?
コロナ禍の影響で緊急事態宣言が発令中ながらも東京オリンピック開催中という非日常が重なった7月末の暑い日にPix4D日本法人の久林通乃さんにスマート農業に関連する話を伺った。





Pix4D(ピックスフォーディ): 最初に伺ったのは謎解きの様な社名の由来について。「Pixは画像のPixel(ピクセル:画素)から。画像から2Dや3D(3次元)のデータを作り出す技術の会社です。3Dに時間の1軸を加えた、4Dを組み合わせた造語」とのこと。これを聞いただけでは未だピンとこなかったが、話を訊いていくうちに「見える化」というのが一つの大事なキーワードであることに気付いた。

農業における「見える化」とは

ドローンによって圃場を上空から鳥瞰する。これが1つ目の「見える化」。これは人やトラクターなど地上の縦x横の2Dの世界では出来ないこと。ドローンという上空からのバードアイ(鳥瞰)によって捕らえられる世界。ナスカの地上絵のメッセージがペルーの海岸砂漠に立っていても認識出来ないのと同じで、圃場に立っているだけでは作物から送られるメッセージを認識出来ないことがある。
これはドローンが手に入れた3Dの世界だからこそ出来る技の一つであるが、ただ上空から見るだけでなく生育の状態も分析出来る。これが2つ目の「見える化」。ドローンに搭載されたマルチスペクトルカメラを通して圃場の画像を分析すれば、そこには人間の眼には認識出来ない光の波長までも認識して生育指数(※NDVIなど)として可視化できる。3つ目の「見える化」は時空を超えての比較認識。これが社名の一部にもなっている3D(3次元)に加えた時間という1軸。同じ地点でも時間によって姿形が変わる。当たり前の話ではあるが比較検証しようとすると画像データを2枚並べないと分からない。この威力を知ったのが当インタビューに先駆けて行っていた群馬県館林市での大麦の圃場での追肥試験の効果をPix4DのPIX4Dfieldsという画像解析ソフトを使って行った比較試験。ふだん輸入肥料を主として営業・販売する現場に身を置いていて痛感する現実 (肥料の効果を目に見える形で示すことが難しい)からすると、これは販売サイドから見ても強力なツールになる!! そう考えたのがPix4Dの久林さんにGRWRS探訪のコーナーで取材・今後の提携を申し入れた一つの理由でした。



我田引水ではなく多田供水を -農業に製造業の視点を

肥料営業・販売サイドの視点という狭量な立場からだけでなく、生産者の視点から見てもPix4Dの持つドローン画像解析技術は大いに役立つに違いない。我田引水ではなく多田供水を。SDGsが提唱され大量消費型資本主義の価値観(今だけ、金だけ、自分だけ)がほころびを見せつつある中で、地球上の限りある資源を有効に、そのための知恵もシェアしようという発想に立った時にPix4Dの持つ画像解析技術はオープンイノベーションで互換性を持っていることもPix4Dに興味を持った大きな理由の一つでした。
他の産業に比べて農業ほど「見えない」産業はないと感じていたところで出会った「見える化」の技術。 前職で製造業(工作機械業界)に従事していた経験から、農業界に転職してきて以来強く感じた農業の課題。 一般的な農業には設計図や工程図といった製造業に不可欠な図面に当たるものが殆ど見当たらず、運・根・勘に頼る部分が大きい!?  自分の勘違い・思い違いも多分に入っているとは思うものの設計図・工程図に当たるものがない農業は海図なき航海と同じにならないか? 特に気候変動が激しい今の農業の場合は? 生育状況を即時(オンタイム)に見ながら状況に応じて対応する。データを蓄積していけば過去の事例も参考にしながら対応できる。設計図通りに進めることが出来なくてもスナップショットで定点観測を続けていくことで簡単に軌道修正が出来る。スイス連邦工科大学という工業大学由来の技術は農業に製造業の視点、工程管理の視点を取り入れるツールになる。これは肥料の場合も同じ。施肥というインプット作業から収穫というアウトプットに至る過程にスループットがある。スループットを見える化するためのツール。肥料をアウトプットのための単なるコストと捉えるのではなく、リターンを最大化するための投資と考える生産者、またその投資判断を他者からの助言からではなく自らの分析・判断によって行いたい生産者にとってはPix4Dの技術は大きな味方になると思います。




専用(PIX4Dmapper)から汎用(PIX4Dfields)へ

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)での研究からPix4Dが始まっているだけに、現在世の中に一番出回っているPix4DのソフトはPIX4Dmapperと呼ばれるプロ仕様の3D画像解析ソフト。どちらかというと大学での研究や測量などに使われており、現在世界各国にいるPix4Dソフトのアクティブユーザー約5万人のうちの大半がPIX4Dmapperを使っている。
プロ仕様と呼ばれるだけあって玄人好みのソフトだが、ドローン操縦のついでに圃場マッピングしたいというお手軽を好むユーザーにとってPIX4Dmapperは少々敷居が高いし、価格も高い。また3D画像でなくても良いというユーザー向けに、低いスペックのPCでも高速2Dマッピング処理を可能としてより汎用性を持たせたソフトがPIX4Dfields。農業への転用を考える方にはPIX4Dfieldsを是非お薦めしたい。PIX4Dmapperを使いこなそうとすると数日間に渡る専用のレクチャーを受けないと難しいが、PIX4Dfieldsであれば簡単なガイダンスを受けるだけでOK。価格も手頃なものになっている。(以下リンクご参照)

PIX4Dmapper
PIX4Dmapperは業界をリードするフォトグラメトリー(写真測量・SfM)ソフトウェアのスタンダードです。
詳しくはPIX4Dmapper製品ページへ。
コンピュータ要件

PIX4Dfields
PIX4Dfieldsは空撮による作物分析など農業分野のユーザーのための高度な高速2Dマッピングソフトウェアです。
詳しくはPIX4Dfields製品ページへ。
コンピュータ要件

PIX4DmapperとPIX4Dfieldsのどちらとも、15日間の無料トライアルライセンスもあり、ライセンス形態は月間・年間ライセンスおよび買取ライセンスがあります。教育機関用のライセンス価格も用意されております。
ご購入はPix4Dのオンラインストア、日本の代理店より、またはPix4D日本オフィスより日本円請求書払いでも可能です。ぜひお問合せください。
お問い合わせ | Pix4D

3D(ドローン)から2D(トラクター)へ

ドローンによって上空(3D)から掴んだデータを再び地上(2D)のトラクターに搭載された可変施肥スプレッダー(ブロキャス)へフィードして可変施肥を行う。
データはサブスクリプション(課金)形式で提供するのではなく、生産者自らがドローンを使って把握して情報加工を行う。
この2つのコンセプトを叶えるためのミッシングピースを埋めるものがPix4Dのソフト。
当社(明京商事㈱)が輸入販売を行っているノルウエーのヤラ・インターナショナルの肥料も4R栄養管理という4つのR(適切な)を標榜する農業関連業界の団体に入っており、肥料資源の有効活用・効率化を希求しています。
4Rのうちの3つのR(Right rate: 適切な量、Right time:適切なタイミング、Right place:適切な場所)を満たそうとするとそれを客観的に掴むためのツールが必要ということで、パートナーを探している中で巡り合ったのがPix4Dということになります。

4R栄養管理とは

Yaraは4RNutrient Stewardship(4つの適切な栄養管理を推奨する団体)の協賛会員です。4R(4つの適切な)とは、適切な肥料源、適切な施肥量、適切な時期、適切な場所を意味し、4Rの枠組みを通じて適切な肥料使用を行うことを目指しています。

4R(4つの適切な)栄養管理とは何か?


4R Nutrient Stewardshipは、生産量の増加・生産者の収益性の向上・環境保護の強化・持続可能性の向上など、作付体系のゴール(究極目標)を達成するための枠組みを提供します。
これら目標を達成するために、4Rのコンセプトには以下の意図が含まれています。
•適切な肥料源
→作物の要求にあった肥料のタイプを選択する

•適切な施肥量
→作物が成長に必要とする量の肥料を与える

•適切な時期
→作物が必要としている時期に肥料を作物に吸収できる様にする

•適切な場所
→作物が栄養素を利用できる様に肥料を配置する

適切に管理された施肥体系は、経済的・社会的・環境的利益をもたらします。 その反対に管理が不十分な施肥体系は、収益性の低下・肥料ロスの増大・水や大気など環境に負担を掛けてしまうリスクがあります。
4R栄養管理には肥料の使用効率を最適化するベストマネジメントプラクティス(BMP)の実行が必要です。 肥料BMPの目標は養分供給を作物の要求と一致させ、圃場からの養分流失を最小限に抑えることです。 BMPの選択は圃場によって異なり、圃場がある地域の土壌や気候条件・作物管理条件およびその圃場特有の要因によって異なります。

ひとりでやろうは馬鹿野郎 ― GRWRS版GoToキャンペーンとは

GRWRS探訪のコーナーでトップバッターとして紹介させて頂いたFarmers Cafe Tokyoの後藤さんの言葉ですが、Pix4Dの久林さんをご紹介頂いたのも後藤さんであり、GRWRS探訪No.2でご登場頂いたメッセ・コーポレーションの菊地さんをご紹介頂いたのも後藤さん。またPIX4Dfieldsを使って群馬県館林で圃場マッピングの協力を頂いている生産者(島野さん)をご紹介頂いたのも後藤さん。こうも後藤さんが重なると何かプロジェクト化したいねと話していて考え付いたのが後藤(GoTo)キャンペーン。
不謹慎でふざけたネーミングと思われるかも知れませんが、何処かに行き着く(GoTo)という想いも込めて付けています。簡単にいうと上記4R栄養管理のコンセプトをドローンとソフトを使って、日本の生産者のご協力のもとで実証実験を行い普及させていくプロジェクト。一人また一社では実現できないことなので実証実験にご協力頂ける生産者を募集して、机上からではなく農業の現場(Fileds)から。最大5名の方にPix4D(PIX4Dfields)のライセンスを6ヶ月分無償提供、もしくは1年間のライセンスを50%OFFで提供するというキャンペーン。 ただしこのキャンペーンにご応募頂ける資格者はPix4Dベルリンオフィスも絡めて行うためドイツのアマゾーネのISOBUS対応の可変施肥ブロキャス(AMATRON3対応機種:ZA-M、ZA-M Ultra, ZA-TS、ZG-TS)をお持ちの生産者となります。
3D(ドローン)から2D(トラクター)への情報フィードはShape-fileというGPSファイルを介すれば理論上可能であり今後汎用化を図っていきたいと考えておりますが、現段階では限られたブロキャスでの対象となっております。
GoToキャンペーンの応募要項を添付致しますので対象機種をお持ちの生産者の方でキャンペーンにご賛同頂ける方は奮ってご応募ください。

⇒GRWRS PIX4Dfields GoToキャンペーン応募要項

またPix4Dにご興味を持って頂いた方は以下HPもご参照下さい。
2021年10月27日、28日に行われる予定(現在日程調整中)の北海道スマート農業サミットで講演を行う予定です。

Pix4D HPリンク

プロフェッショナルな写真測量とドローンマッピングソフトウェア | Pix4D
ドローンマッピングで農業をデジタル化 | Pix4D

北海道スマート農業サミット

北海道スマート農業SUMMIT | SAC×マイナビ農業 (mynavi.jp)

三宅耕司(明京商事株式会社)

GRWRSを監修。主にYara社海外法人の記事の翻訳を担当。
Yara社が掲げる“生産者中心 Farmers-Centric”の理念をGRWRSの記事の中にも反映・実践できる様にしたいと思っております。
農法・使用する農業資材はライフスタイル、価値感が人それぞれで違っているのと同じ様に生産者によって個性があっていいと思うし、そうあるべきとも思いますが、どの農法にでも通底するようなエッセンス・根拠は必ずある筈と思ってGRWRSの記事製作を行っています。
野球選手の評価がセイバーメトリクスという新しい指標によって変わった様に肥料の世界においても新しい視点・評価の在り方が普及・発展し、生産者にとって最適な資材が意図をもって選択され、使用されることを願っております。
そのためにも肥料のサプライヤーの立場から情報が偏らないように、非対称とならないような情報発信を心掛けていきたいと思っております。

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