秋撒き小麦で播種が遅れた場合の管理

秋撒き小麦の播種が遅れている場合は、潜在収量(yield potential)を減らさない様にするための肥培管理を行う必要があります。




小麦の播種が遅れると2つの問題が発生します。 最初の問題は播種が遅れることによって作物が生育するための増殖培地としての土壌状態が悪くなってしまうことにあります。 地温は月に約2度低下します。特に湿気を含んだ土壌では明らかに土壌中の空気残存量が減り、生育速度と栄養素の利用可能性が低下します。 2番目の問題、こちらの方が重要ですが、播種の遅れにより生育期間が短くなり作物バイオマス(収穫物となる胚乳、胚芽を含む茎、根などの総重量)が失われることです。 収量達成の大原則は作物バイオマスであるため非常に重要です。(作物バイオマスが収量に関連する要因の50%にあたります。)

作物バイオマスの増大は収量の大きな鍵になります

作物バイオマスを増やすために非常に重要な要素のひとつは生育ステージ初期の5月、6月、7月の肥培管理です。 Yaraの栄養管理戦略は失われた潜在収量の一部を回復するのに役立つ救済策として使用できます。 Yaraの栄養管理戦略とは根から吸収させる複合化成肥料(※注:YaraMila:日本で一部種類が販売されています)と葉面散布して葉から吸収させる肥料(※注:YaraVita:日本では販売しておりません)を組み合わせて春先の成育を高めることです。 地温が上がり摂氏5℃に達すると作物は再び生育し始めますが、主要栄養素(窒素:N、リン酸:P、カリウム:K、硫黄:S)が根圏で作物に取り込まれる状態になっているかが最も重要なポイントになります。 小麦にこれら主要栄養素を取り込ませるように適切な肥料を散布することが春先の肥培管理で重要となります。 リン酸の形態は特に重要であり、MAP、DAPの様なオルトリン酸が主成分のリン酸肥料を避けて土壌中にすぐに「固着」させないことと、継続的に作物に供給されることが重要です。

Yara硝酸化成肥料 独自のリン酸形状

根からのYaraMila複合化成肥料の施肥と併せてYaraVita(※注 Yaraの葉面散布用液肥:日本では販売しておりません)でリン酸を成長エネルギーの起爆剤として葉面散布することで春先の初期成育を加速させます。

窒素量は失われたバイオマスを回復するのに役立ちます

春先の小麦の肥培管理で次に重要となるポイントは成育ステージ初期の段階で窒素の成分量が高い肥料を施肥することです。 成育ステージ初期の窒素は葉の成育を促進し分げつを進め、失われたバイオマスを回復するのに役立ちます。成分量が安定した均一なNKPS(窒素、リン酸、カリウム、硫黄)が配合された複合化成肥料を春先最初に窒素量70kg/ha施肥することがポイントとなります。
Yara英国の元記事では※YaraMilaActivaS(16-15-15+6.5SO3)を1ha当たり438kgか※YaraMila52S(20.6-8.2-11.6+6.5%SO3)を1ha当たり340kg春先最初に施肥することが重要とされています。(注※両銘柄とも日本では販売されておりません)

Key actions
• Apply YaraMila Actyva S at 438kg /ha or YaraMila 52 S at 340kg / ha (to supply 70 kg Nitrogen) at first application in early spring (late Feb/early March)
• Apply YaraVita Magphos K at 5 l/ha at GS25

日本で販売されているYaraの複合化成肥料(YaraMila)

YaraMila コンプレックス217
12(うち硝酸態窒素5)-11(うち水溶性リン酸7)-17(水溶性カリ)+20%S03-NPKが一粒一粒に配合された高度化成肥料。苦土(マグネシウム)と硫黄に加えて微量要素が入っており、露地、ハウス栽培作物に幅広く使えるオールラウンド肥料です。

YaraMilaスプリンター
20.5(うち硝酸態窒素9.5)-7(うち水溶性リン酸4.5)-14(水溶性カリ)+カルシウム3%配合の高度化成肥料。小麦などの穀物にも適しておりますが、窒素とカリウムの要求量が高いビートにも最適な肥料です。

YaraMila コンプレックス L366
23(うち硝酸態窒素11)-6-6 + 可溶性カルシウム4.85% –即効性の硝酸性窒素と肥効が長続きするアンモニア性窒素がバランス良く配合されているL型肥料です。気温・地温が低く窒素が効きにくい時期に特に効果を発揮します。

YaraMilaコンプレックスN555
15(うち硝酸態窒素6)-15-15+可溶性カルシウム6%- NPKがバランスよく配合されたオールラウンド肥料です。

Yara製品の詳細はこちらから

肥料

GRWRSで関連する他の記事

寒い時期の窒素源と施肥タイミングについて

春の施肥が収量を増やす8つの理由

春の当用期に使う窒素源と施肥タイミングについて

リン酸二アンモニウム(DAP)がリン酸肥料のベストの選択ではない理由

 

本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

GRWRS ~食と農のアカデミー~ SNSのご紹介

Facebookページ

Twitter
Facebookグループ FARMERS ACADEMY

Youtube

関連記事

  1. 農業経営者が死亡した場合の所得税の手続き

  2. Yara International ASA 紹介動画

  3. 低地温下でのアンモニウム毒性を避ける方法

  4. タマネギの堅さを改善する

  5. Yara硝酸化成肥料 リン酸を主体としたYara社の独自製法

  6. 農業法人について

  1. スイカの初期生育時に適切な栄養管理を行うことでその後の結果も変…

    2022.06.17

  2. メロン・スイカの開花期・着果期の適切な施肥設計は収量と品質に不…

    2022.06.10

  3. GRWRS探訪No.3 Pix4D 続編 北海道深川市農事組合法人 ユナイ…

    2022.05.27

  4. ジャガイモの品質をカルシウム欠乏によって落としていませんか?

    2022.04.28

  5. ”ヨーロッパの戦争-世界的な食糧危機”を読む

    2022.04.22

  1. ジャガイモの病気予防

    2017.11.17

  2. ジャガイモの品質向上

    2017.11.15

  3. ジャガイモの収量向上

    2017.11.14

  4. 小麦の健全な生育の維持

    2017.11.10

  5. 小麦の品質向上

    2017.11.07

Youtubeチャンネル

FARMERS ACADEMY PV

特 集

Facebookページ