「農業の多面的機能」という言葉があります。この言葉、農家の人はあまり口にしません。しかし・・・
- 農林水産省の人とか
- 自治体の農政担当の人とか
- 農業学者の先生とか
- 農業コンサルタントとか
- 農協の課長さんとか
- 農業系のNPOの人とか
そういった顔ぶれの人々が好んでよく使うようです。
なので、こうした方々と仕事をするときは、「農業の多面的機能」という言葉を知っておくとよいでしょう。
農業とは、何をする産業なのでしょうか?「野菜や果物や米などを作ったりすること」ふつうは、そう思いますよね。
でも実は、それだけではないかもしれない。ほかにもいろいろ、農業にできることがあるのでは・・・?こう考える人が増えてきました。
「ほかにもいろいろ、農業にできること」これを、「農業の多面的機能」と呼びます。
先ほど書いたように、肝心の農家さんがこの言葉を口にすることはあまりありません。むしろ農業に直接従事していない人たちが、一生懸命「農業の多面的機能」をアピールしようとしています。
これはどっちが正しいというものではなく、農家には農家の、評論家には評論家の立場があるということです。
「ほかにもいろいろ、農業にできること」とは具体的には何があるでしょうか。
例えば、
- みかん狩り
- いちご狩り
- りんご狩り
- マンゴー狩り
などがそうです。こういうのは農業というより旅先のレジャーといったほうがよさそうです。
また、オランダあたりでは、「ケアファーム」というのが発達しています。日本でいう養護施設なのですが、みんなで畑を耕して作物を作りながら、心身の成長を目指しています。このケアファームが実際に心身の成長をもたらしているかどうかの研究も進んでおり、そういう効果が高いという結果がでています。
食育の一環として子供がナスの収穫を体験したり、イモ堀りをしたりすることがあります。農作業を体験すると食に対する関心が呼び起こされ好き嫌いが減ると言われていますが、統計的にもそれは正しいようです。こうしたことも、「農業の多面的機能」に含まれます。
そのほか、農村というと、
- 「美しい自然」
- 「豊かな生態系」
- 「温かい素朴な人々
- 「日本の伝統文化が残っている」
こんなイメージがあって、都会の人々の疲れた心をひきつけます。つまり、農村には「癒し」の効果がある。