所得税の青色申告制度について

青色申告制度

日本の所得税は、納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税する申告納税制度を採用しています。また、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取り扱いが受けられる青色申告制度があります。
令和1年10月より消費税の税率変更と軽減税率制度が導入され、実務においては、消費税を意識した記帳がより重要視されることになりました。

青色申告の申請手続き

新たに青色申告の申請をする人は、原則としてその年3月15日までに青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。ただし、新規に業務を開始した事業者や相続により業務を承継した事業者は提出期限が異なりますので注意して下さい。

青色申告の特典(代表例)

1. 青色申告特別控除
・65万円の青色申告特別控除
不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により取引を記録している場合には、原則としてこれらの所得を通じて最高65万円を控除します。この65万円の青色申告特別控除を受けるためには次の手続きが必要です。
 ・その年分の確定申告書に複式簿記により作成した貸借対照表及び損益計算書を添付すること
 ・その年分の確定申告書を、その申告書の提出期限までに提出すること
 ・10万円の青色申告特別控除
 上記以外の青色申告者については、不動産所得、事業所得及び山林所得を通じて最高10万円を控除します。

2. 青色事業専従者給与
青色申告者と生計を一にしている配偶者その他の親族で、その青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与については、下記の要件を満たしている場合には必要経費に算入することができます。
 ・実際に給与の支給をしたこと
 ・その給与の額が事前に提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した金額の範囲内であること
 ・その給与の額がその専従者の労務の対価として相当であること
  なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれませんので注意して下さい。

3. 純損失の繰越控除
事業所得などに損失の金額がある場合で損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない金額が生じたときは、翌年以降3年間にわたり、各年分の所得金額から控除します。

4. 純損失の繰戻還付
前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越控除に代えて、その損失額を生じた年の前年に繰り戻して前年分の所得税の還付を受けることもできます。

5. 貸倒引当金
事業所得を生ずべき青色申告者は、年末の貸金帳簿価額の合計額×5.5%を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額を必要経費とすることができます。

次回は、一定の青色申告者が適用を受けることができる農業特有の制度、農業経営基盤強化準備金制度についてご紹介いたします。

 

石井宏(石井宏税理士事務所)

東京都武蔵野市にある税理士事務所です。最寄駅はJR中央線・京王井の頭線の吉祥寺駅で、住みたい街ランキングの上位に選ばれる人気の駅です。井の頭公園など、自然や公園が多いことや商業施設や飲食店が充実しているのが特徴です。

現在、上場会社の関係会社からオーナー系中小企業、不動産オーナーなど、様々な規模の法人個人の税務、会計の関与をさせていただいております。また、資産税(相続・贈与・譲渡等に関する税金)に関する相談においても多数実績がございます。

農業の事業や法人化について、税務・会計分野のサポートをさせて頂きたいと思っております。(現状、農家や法人組織等を合わせた農業経営体数は一貫して減少していますが、農業経営体のうち、法人経営体数は増加傾向で推移しております。)農業を法人化した場合にはどのようなメリットがあるのか?デメリットはないのか?さらには将来の事業承継のビジョンまで、専門的な立場から経営者の皆様と共に考えていきたいと思います。

(日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格者)
(一般社団法人全国農業経営コンサルタント協会正会員)
ウェブサイト:https://141tax.com

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