ビートの収量を上げるための2つの重要なポイントはビートの根の重量を増やすことと糖度を上げることです。
ビートの収量はビートの根の収量×糖度によって決まります。 製糖工場からすると糖度が高いものは糖分を抽出するために蒸発させる水分量を減らす=製糖のためのエネルギー消費量もセーブ出来るということになります。 そのため生産者も通常糖度を上げることに腐心することになります。
収量を上げるための重要な要素は糖を生産するための光合成を活発に行わせることですが、それは光合成を担う葉の生育と維持が重要であるということに他なりません。太陽光を迅速にかつ効率よく捕らえられる様に成長期を通して葉の緑(受光量)を維持することがポイントになります。ビートは生育が順調で開花前であれば生育ステージ初期の段階から糖分を根に蓄積していきます。 微量栄養素を含む全ての栄養素をバランスよく作物に与えるための肥培管理がそのための秘訣になります。
受光量と糖収量との関係
縦軸:1haあたりの糖収量
横軸:受光量(MJ(メガジュール)/m2)
窒素はビートの収量を増加させます
生育ステージ初期にしっかりとした葉を作り上げることが光合成によるタンパク質(糖)合成を高める秘訣ですが、そのことは窒素が単一の栄養素として収量に最も連関する理由にもなります。しかしながら、窒素が十分に作用するためには他の栄養素不足が初期生育の阻害要因にしないことも重要です。 窒素は植物の生育ステージのすべての段階で生育を促進します。
ビートの糖収量は先に述べた様に根の収量×糖度となります。したがって糖収量を上げるには糖度を上げることも重要なポイントになります。 過度に窒素を与えると糖度を低下させる原因にもなるため、窒素を利かせたいタイミングで適量を作物に吸収される形態で与える(作物に吸収させる)ことが非常に重要です。
リン酸は初期成育に不可欠です
リン酸は土壌中で他の栄養素と固着して効かない状態になっていることが多く、土壌中に十分あったとしても作物には吸収されない可能性があります。 リン酸は初期成育に重要な栄養素ですので作物に吸収される形態のリン酸が供給されていることが重要となります。
カリウムとナトリウムはどちらも重要です
カリウムとナトリウムは植物に出入りする水の調節因子の働きをしています。水分の移動によって栄養素の運搬・排出を行っていますので植物の成長にも有益な効果をもたらします。
高収量には硫黄が必要です
硫黄は高収量に不可欠な栄養素であり、「硫黄含有」アミノ酸はタンパク質の構成要素であるため作物の成長と密接に関連しています。 通常健康な植物体の窒素と硫黄の比率は約15:1であるため窒素とも関連しています。 窒素がこれよりも高い比率となっている場合は硫黄欠乏の可能性を示しています。
マグネシウムは葉緑素に不可欠です
マグネシウムは葉緑素の重要な成分であるため、収量を増加させる最大要因となる光合成の活性化に不可欠です。
微量栄養素の欠乏は収量を減少させます
根が成長する時期は急速な細胞分裂が起こります。細胞分裂にはホウ素が必要となるためホウ素が不足すると生育が悪くなり根と葉も勢いを失い、収量・品質低下の原因になることがあります。 マンガン、銅、亜鉛、鉄、モリブデンはすべてビートの生育に不可欠な微量栄養素です。
ビートの収量に影響を与える他の要因
温度、日照、水の供給は収量と糖度の両方に大きな影響を与えます。残念ながら生産者は水の供給に直接関わる灌漑設備の整備などを除いてはこれらを自らでコントロールすることは出来ません。
これらの生育環境に係る外部要因とは成長条件と同様に収量はビートの品種によっても差が出てきます。 根の収量は高い反面糖度が低い品種もあれば根の収量が低い代わりに糖度が高い品種もあります。
Yaraがビートに推奨する肥料
YaraMila コンプレックス217
12(うち硝酸態窒素5)-11(うち水溶性リン酸7)-17(水溶性カリ)+20%S03-NPKが一粒一粒に配合された高度化成肥料。苦土(マグネシウム)と硫黄に加えて微量要素が入っており、露地、ハウス栽培作物に幅広く使えるオールラウンド肥料です。
YaraMilaスプリンター
20.5(うち硝酸態窒素9.5)-7(うち水溶性リン酸4.5)-14(水溶性カリ)+カルシウム3%配合の高度化成肥料。小麦などの穀物にも適しておりますが、窒素とカリウムの要求量が高いビートにも最適な肥料です。
Yara製品の詳細はこちらから
ビートに関する他の記事
本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。
Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~
Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。
また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。