窒素肥料の価値とは?

窒素に対する作物の反応は予測可能であり、また十分に研究・確立されています。 窒素の最適な割合は栽培している作物の市場価格と窒素肥料のコストを両天秤に掛けて判断することが重要です。 作物の価格と窒素肥料コストの両方ともが世界の市場の影響を受けるものであり、生産者にとってその大部分はコントロール出来ないものです。 生産者がコントロール出来ることとしては市場環境がどうであれ、栽培する作物の窒素反応に基づいて窒素の正しい割合を簡単に計算することで投入する肥料コストに対して正当な利益を得る事が出来る様になります。




窒素に対する作物の反応は十分に研究・確立されています。 小麦とナタネの典型的な窒素反応曲線を以下に示します。 これらはさまざまな圃場で長年にわたって実施された数々の試験の平均に基づいています。 曲線の傾きは窒素の使用効率によって変化し、曲線の頂点は植物遺伝子の特性によって異なります。また左縦軸と曲線が交差する窒素ゼロの値もその圃場の肥沃度によって変化しますが、全体の傾向として見ることは可能です。着目すべきは曲線の頂点部分以降が平坦となっていないことです。必要以上の窒素は徒長・倒伏につながり収量低下というペナルティとなる。つまり窒素には与えすぎると徐々に収量が低下するティッピングポイントがあるということです。


窒素投入量に対する小麦とナタネの収量曲線
縦軸:収量(㌧/1haあたり)
横軸:窒素投入量(kg/1haあたり)

曲線の傾きで示される各圃場での窒素に対する実際の反応は窒素の投入量ではなく、窒素の使用効率に応じて変化します。使用効率とは本質的には植物が土壌から窒素を養分として吸収して取り込むことが出来るかの容易性を図るための尺度です。 使用効率を低下させる要因が少しでもあると、収量カーブの曲線の傾きが緩くなり同じ収量を達成するためにより多くの窒素投入を必要とすることになってしまいます。

窒素使用効率が高まると少ない窒素投入でも同じ収量を維持出来ます

最適な窒素投入量は農業経営の観点から見れば、経済性を考えて栽培している作物の市場価値と窒素肥料のコストに基づいて最適値を計算することが出来ます。 作物の市場価格と窒素のコストの両方ともが世界経済・マーケットの影響を受けており、その大部分は生産者がコントロール出来るものではありません。 作物の窒素反応に基づいて最適な窒素量を簡単に計算出来る様になればマーケットがどうであれ、生産者は投資収益率を最適化できるようになります。 昨今の肥料価格高騰は経済的に見れば、肥料価格の高騰分を調整するために窒素投入量を少しでも下げる必要があることを示唆していますが、窒素量を極端に下げると収量低下というペナルティを受けるので過度の減量は禁物です。
おそらく最適な窒素投入量を確認するためのより良い方法は、以下に示すように肥料コストに対する利益を計算することです。 これは利益の大部分が窒素の最初の70%によって達成され、その後最適な窒素量まで段階的に増加して頂点を迎え後、頂点を超えて再び減少に転じることを示しています。 これが意味することは作物の市場価格が変動するとしても肥料価格に関係なく、小麦の場合は160kg/haの窒素量投入によって最大の利益が得られるということです。 つまり肥料の価格が上昇している場合でも、最低限の利益を確保するためには最小限の窒素を使うことを計画する必要があるということです。春にこの計画を再評価して、作物の市場価格動向・肥料の無機化作用に基づいて、また土壌診断、葉色診断などを駆使して最適な施肥量を計算し、それが経営的にも正しい判断か確認します。

窒素肥料コストに対する利益(小麦)

窒素1kgあたりの肥料コストが1.67ポンド(約250円)、小麦1㌧の価格が200ポンド (約3万円):1ポンド=150円換算)の前提


縦軸:金額(英国ポンド/1haあたり)
横軸:窒素投入量(kg/1haあたり)


一番上の曲線:作物から得られる利益
真ん中の曲線:肥料コストに対する利益
一番下の曲線:窒素肥料コスト

窒素肥料コストに対する利益(ナタネ)

窒素1kgあたりの肥料コストが1.67ポンド(約250円)、ナタネ1㌧の価格が530ポンド (約8万円):1ポンド=150円換算)の前提



一番上の曲線:作物から得られる利益
真ん中の曲線:肥料コストに対する利益
一番下の曲線:窒素肥料コスト

窒素の使用効率を最大化することにより窒素を最大限に活用します

窒素使用効率に影響を与える要因の多くは生産者のコントロール下に置くことが出来ます。真っ先にコントロール出来るのが土壌構造、排水性、有機物含有量、土壌酸性度などの土壌要因です。 植物の根が健康で自由に土壌中に繁茂できる場合、植物は水・窒素・その他の栄養素をより効率的に吸収できるようになり、更には土壌中にもともと残存している窒素をより効率的に吸収できるようになります。その次に植物が吸収した窒素をどれだけ効率的に利用できるかに影響する要因があります。これらには、他の栄養素-特に成長に不可欠なリン酸とカリウムが重要ですが、硫黄も植物の窒素利用能力に影響を与えます。また植物体内で重要な役割を果たしている微量栄養素の存在も無視することは出来ません。これらの栄養素のいずれかでも不足すると窒素の使用効率が低下し、収量低下に繋がります。最後に窒素使用効率に影響を与える可能性のある他の要因は植物にストレスを与える環境要因です。 干ばつ・長雨・熱ストレス、その他さまざまな病気による攻撃はすべて窒素使用効率を低下させる要因になり得ます。

作物が窒素を利用する能力を制限している他の要因がないことを確認してください
生産者はまた作物の生育状況を監視して窒素必要量を決定し、作物から出されるシグナルを窒素摂取の指標として効果的に使用することによって窒素使用効率を最適化することもできます。 これは組織分析を通じて行うことも出来ますが生育状況を指数化して分析するデジタルツールを利用して行うことができます。 これらのデジタルツールは植物の窒素レベルを特定し追肥として施肥する窒素量、より正確な施肥タイミングを理解するのに役立ちます。

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日本で販売されているYaraの複合化成肥料(YaraMila)

YaraMila コンプレックス217
12(うち硝酸態窒素5)-11(うち水溶性リン酸7)-17(水溶性カリ)+20%S03-NPKが一粒一粒に配合された高度化成肥料。光合成に不可欠な苦土(マグネシウム)、また近年不足しがちな硫黄に加えて各種微量栄養素も入っており、露地、ハウス栽培作物に幅広く使えるオールラウンド肥料です。

YaraMilaスプリンター
20.5(うち硝酸態窒素9.5)-7(うち水溶性リン酸4.5)-14(水溶性カリ)+カルシウム3%配合の化成肥料。小麦などの穀物にも適しておりますが、窒素とカリウムの要求量が高いビートにも最適な肥料です。

YaraMila コンプレックス L366
23(うち硝酸態窒素11)-6-6 + 可溶性カルシウム4.85% –即効性の硝酸性窒素と肥効が長続きするアンモニア性窒素がバランス良く配合されているL型肥料です。気温・地温が低く窒素が効きにくい時期に特に効果を発揮します。

YaraMilaコンプレックスN555
15(うち硝酸態窒素6)-15-15+可溶性カルシウム6%- NPKがバランスよく配合されたオールラウンド肥料です。
Yara製品の詳細はこちらから

 

本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

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