大豆栽培における窒素管理

大豆は実の部分に約40%のタンパク質を含んでいますが、それはタンパク質を作る栄養素である窒素(N)の要求量が高いということに他なりません。




大豆は根粒菌の働きによって必要とする窒素のほとんどを大気中から固定することができます。 一方で土壌中から無機化された窒素も吸収します。 大豆は伝統的に窒素肥料を一切与えなくてもうまく育ちました。
大豆栽培の窒素管理は長らく根粒菌の働きを活発にすることだけに注力していれば良い時代が続いていました。 しかしながら収量が増えるに従って根粒菌による窒素固定だけでは大豆の窒素要求量を満たすのに十分な窒素が得られないケースが増え、結果として窒素不足となる場合があります。 遺伝子学と栽培管理の進化によって大豆の収量が増えることが当たり前となった現代では、潜在収量を最大化するために窒素施肥が必要となるケースが増えてきました。

大豆の生育ステージ別窒素吸収量


縦軸:窒素吸収量(kg/ha)
横軸:生育ステージ V4(栄養成長終了:着莢開始)R1以降(生殖成長)
組織別窒素吸収量:Seed種子、Pod莢、Stem茎、Leaf葉
養分投入量(1haあたり)窒素:50kg、リン酸:22,4kg、カリウム:22.4kg


大豆の養分吸収量の測定は植物の葉と茎の蓄積量をベースにします。 養分吸収は通常発芽から最大蓄積点(約75日間)まで増加します。 この期間を過ぎると栄養部分から大豆(実)への養分転流が始まり葉と茎部分の栄養素の蓄積は減少していきます。
養分が最も多く吸収される時期は発芽後45日後、つまり開花開始期(R1)です。 養分最大吸収点と養分最大蓄積点の間(開花開始-R1と着莢開始-R5の間)のこの30日間が最も重要な期間になります。この30日の間に干ばつ・栄養不足・病害虫などのストレスがあると収量を大きく減らしてしまうことになりかねません。 この最も重要な30日間の養分吸収量は最大累積量の52%にもなります。
養分供給の重要な段階は発芽後40日から始まり最大蓄積点(75日)まで続きます。 したがって養分を与える必要がある場合は開花開始(R1)の前に行う必要があります。

大豆1トン作るのに消費される養分量


縦軸:作物部位:Grains 大豆本体、Plant residues 大豆以外、Total 合計、% exported 大豆への養分転量%
横軸:主要要素(消費量単位kg/t)N窒素、P2O5リン酸、K2Oカリ、Caカルシウム、Mgマグネシウム
微量要素(消費量単位g/t)S硫黄、Bホウ素、Cl塩素、Moモリブデン、Fe鉄、Mnマンガン、Zn亜鉛、Cu銅

Plant part N P2O5 K2O Ca Mg S B Cl Mo Fe Mn Zn Cu
Kg/t g/t
Grains 51 10 20 3 2 5,4 20 237 5 70 30 40 10
Plant residues 32 5,4 18 9,2 4,7 10 57 278 2 390 100 21 16
Total 83 15,4 38 12,2 6,7 15,4 77 515 7 460 130 61 26
% exported 61 65 53 25 30 35 26 46 71 15 23 66 38

Table: Average amount of absorbed and exported nutrients by soybean crop Source: Embrapa, Brazil 2008

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本記事は、Yara米国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

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