果物のTSS(Total soluble Solids 全可溶性固形物量:柑橘の甘味の指標)は通常果物のBrix値を評価することで得られます。 TSSまたは糖度は果物の炭水化物・有機酸・タンパク質・脂肪・ミネラルを測定して算出します。これは果物の生の重量の10~20%を占め、果物が成熟するにつれて増加して、酸味が少なくより甘い果物になります。 生産者はTSSと果実の酸味のバランスに気を付けて生産することが重要です。
作物の栄養素と柑橘のTSSとの関係
窒素とカリウムはTSSに与える影響は比較的軽微です。 ホウ素・鉄・マンガン・亜鉛はTSSを増加させる効果がある一方でモリブデンはTSSの減少を引き起こします。
Boron ホウ素
ホウ素は果物の糖レベルを増加させます。 パキスタンでスイートオレンジ(甘橙)向けに過去に行った試験結果ではホウ素の散布量を慣行よりも0.6%増やすことでTSSがほぼ50%増加しました。
ホウ素とTSS(%)の因果関係
縦軸:TSS(%)
横軸:ホウ素(B)施肥量
Iron 鉄
鉄を使用すると果物の糖レベルが効果的に増加します。 パイナップルオレンジ、ワシントンネーブル、バラディミカンで行った試験では鉄分が多い圃場や鉄の葉面散布によってTSS(%)の増加が確認出来ています。
鉄とTSS(%)の因果関係
縦軸:TSS(%)
横軸:鉄(Fe)土壌含有量、葉面散布(spray)
Manganese and zinc マンガンと亜鉛
マンガンは亜鉛と結合することが多く、相乗効果で果物のTSS含有量を増加させます。 また果物のアスコルビン酸含有量を向上させるのにも役立ちます。 マンガンはTSSと酸の双方の数値を上げるためTSS/酸比にほとんど影響を与えることがないため、消費者にとっても望ましい果物を生産することが出来ます。
マンガン/亜鉛 葉面散布とTSS(%)の因果関係
縦軸:TSS(Brix値)
横軸:左:慣行(水のみ) 中央:マンガン葉面散布 右:マンガン+亜鉛葉面散布
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本記事は、Yara米国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。
Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~
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しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。
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