栄養吸収効率を高めることによりジャガイモの収量と品質を向上させる

ジャガイモに必要な栄養素をすべて確実に供給されるようにすることが、作物の収量を向上させ、塊茎の品質を確保する最良の方法です。 他の作物と同様にジャガイモにもバランスの取れた栄養素が必要ですが、必要とされる時に必要な栄養素が制限されたり利用できなかったりすると、成長が遅くなり、収量や品質が低下します。

ジャガイモ栽培は良いスタートを切ることが重要です

定植直後から十分な量のリン酸イオンを確実に植物に利用可能な状態で供給できるようにすることが、収量の可能性を最大限に引き出す鍵の 1つです。

リン酸の吸収効率を改善する方法

リン酸は新芽、特に根の発育に重要な役割を果たしており、そのためジャガイモの生育初期段階に十分に供給することが重要です。 ここでの問題はリン酸イオンが土壌中で殆ど移動しないことです。土壌中のリン酸イオン自らが根に向かって移動することはなく、根がリン酸イオンに向かって成長出来るかが鍵になります。 ジャガイモは比較的根が貧弱な作物であり、初期生育時に水、その他栄養素に達することができる様に根圏を拡げることに苦労することが多いという事実と照らし合わせると、リン酸を吸収させることの重要性をご理解頂けるかと思います。

リン酸を吸収させるためには幾つか方法がありますが、リン酸単肥肥料の代わりに肥効の異なる3種類のリン酸イオン(ポリリン酸、オルトリン酸、リン酸二カルシウム(CDP))に加えて、窒素・カリウムが配合されたYaraの化成肥料(YaraMilaⓇ)を使用することも一つの選択肢となります。

施肥タイミングを適切に行うことで、作物が必要とする時期にピンポイントでリン酸が確実に作物に吸収され、土壌中に固着する量を減らすことが出来ますが、 これは定植前に単肥として施肥するするよりも、定植時または定植直後にリン酸に窒素・カリウムなど他の栄養素も配合された複合肥料を施肥する方が栄養吸収効率を高めることが出来ます。

作物にすぐに吸収されるリン酸を供給するということ以外に、長期間にわたりリン酸の肥効を維持出来る様な複数のリン酸イオンが含まれた肥料を選択すると、「固結」の問題を減少させえることが出来ます。 固結とは植物に吸収されるべきリン酸イオンが低pHの土壌では主に鉄またはアルミニウムイオンと結合、また高pHの土壌では主にカルシウムイオンと結合して土壌中に閉じ込められる現象です。 Yaraの化成肥料(YaraMilaⓇ)には3種類の異なるリン酸イオンが配合されています。土壌内での「固着」のリスクを減少させ、植物に利用可能なリン酸イオンを長期間にわたって供給します(P-extend)

Yara硝酸化成肥料 独自のリン酸形状

 

土壌全体へリン酸イオンを行き渡らせることが出来れば、植物のリン酸吸収効率も向上しますこれを達成するための最良の方法は、肥料粒子の数を増やすことです。 過リン酸石灰や溶リンなどのリン酸単肥肥料は53のリン酸成分(P2O5五酸化二リン)を含むDAPリン酸二アンモニウム)を主原料としているためリン酸が一粒の中に濃縮されているものの土壌全体に行き渡る粒子数で見るとみると相対的に少なくなってしまいます。 

一方でYaraの化成肥料(YaraMilaⓇ)には肥料一粒一粒の中にすべての栄養素が含まれていますので14%のリン酸成分(P2O5五酸化二リン)でも粒子の数は約4倍になります。 

リン酸二アンモニウム(DAP)がリン酸肥料のベストの選択ではない理由

 

カルシウムによってジャガイモの品質の殆どを改善できます

カルシウムはジャガイモにとって不可欠な栄養素であり、塊茎の成長中に十分なカルシウムを供給することで、塊茎の品質面の殆どを改善できます。

カルシウムがジャガイモの品質を向上させるメカニズム

カルシウムはジャガイモにとって不可欠な栄養素であり、成長中にカルシウムを十分に供給することで塊茎の品質のほとんどの側面を改善できます。 作物の細胞壁の維持、健康な葉と塊茎の発育のために必要です。 

カルシウム欠乏症は、植物細胞が死ぬことによって塊茎に小さな茶色の斑点が現れる生理障害として広く知られています。 これは細胞壁内のカルシウム不足に直接関係しており、細胞壁が十分に強くない状態で細胞増殖が起こると細胞が崩壊して壊死が起こります。 

カルシウムは一度細胞壁に取り込まれると再分配することができないため、新しい細胞が増殖するときに十分な量を供給することが重要です。 すでに述べたようにカルシウムは細胞壁に不可欠であり、細胞、特に皮に強度を与えます。 したがって、十分な量を供給することで、皮の仕上がりが良好になるだけでなく、収穫時や集荷作業時に発生するリスクがある打痕傷などの物理的損傷を減らすことができます。

Yaraの硝酸カルシウムは細胞強化に効果的なカルシウム資材

ただし、カルシウムを作物に取り込ませるタイミングを適切にすること以外にカルシウムの原料が適切であるかどうかも重要なポイントになります。 通常石灰資材には作物に必要十分なカルシウムが含まれており、散布すれば作物にとって必要十分なカルシウムが供給されているという誤解が時々ありますが、多くの石灰資材は炭酸カルシウムをベースとしています。 炭酸カルシウムは殆ど水に溶けない(硝酸カルシウムの6万分の1以下しか水に溶けない)ため、蒸散の作用で根から水と一緒に取り込まれことが多いカルシウムの特徴からするとジャガイモにとっては利用出来ないカルシウムを与えていることを意味します。 

ホウ素は植物内や細胞壁内で重要な役割を果たし、カルシウムとの相乗効果がありカルシウムの吸収効率を上げる効果がありますホウ素は細胞膜と細胞壁の安定化に関与しており、これにより収穫・集荷作業中の打痕傷が軽減されます。 

ジャガイモの打痕傷を減らすには?

前述したようにジャガイモ栽培には生育中の塊茎に可溶性カルシウムを行き渡らせることが重要であるため、カルシウムの最適な散布時期は塊茎肥大前です。 但しカルシウムが水に溶けてすぐにジャガイモに取り込まれることが大前提となります。Yaraの硝酸カルシウム肥料(YaraLivaⓇ)はその点で水溶性が抜群のカルシウム資材ですので、塊茎肥大前に施肥する肥料として理想的です。 

硝酸カルシウム肥料 YaraLiva™紹介動画

 

カルシウム(Ca)の効用まとめ

カルシウムは塊茎の品質にとって重要な栄養素であり、細胞壁を強化して塊茎の品質の多くの側面を改善します。 

 

ホウ素(B)の効用まとめ 

ホウ素は細胞膜と細胞壁の安定化に関与しており、収穫・集荷作業中の打傷を軽減します。 

 

カルシウム効果を高める 

過去に行った様々な試験でカルシウムがさまざまな障害を制御または軽減することで塊茎の品質の改善に寄与することが一貫して示されています。 具体的にはカルシウムは塊茎の皮の仕上がりを最大70% 改善、打痕傷を約40%内部褐変などの生理障害を約75%減少させた試験結果があります 

植物体内のカルシウムの移動の殆どは蒸散の作用で木部内の水移動(吸収)に伴って起こっていることが分かっています。つまり一般的にカルシウムは根から上方へしか移動できません。 塊茎のカルシウム量は葉からではなく土壌中の水溶性カルシウムが根から吸収されることによってのみ増加します。 植物が葉から塊茎にカルシウムを移動させることは生理上不可能です。 

カルシウムの水溶度はカルシウムの吸収効率を上げるための一番のポイントになります。 しかし驚くべきことに土壌中のカルシウムの殆どは植物が利用できない形で存在します。  硝酸カルシウムはカルシウムの中で最も水溶性が高く植物が最大限吸収・利用出来る唯一のカルシウム資材です。 

ジャガイモは水溶性の形で提供される場合にのみカルシウムを利用できます。 Yaraの硝酸カルシウム(YaraLivaⓇ)は他のどの資材よりも一番水に溶けるカルシウム肥料です。 炭酸カルシウム(炭カル:石灰)、硫酸カルシウム(硫カル:石膏)などの他のカルシウム資材は硝酸カルシウムよりもはるかに水溶度が低いため、植物のニーズを満たすために十分なカルシウムを必要な時期に、短期間に作物に供給することが出来ません 

水に良く溶けるカルシウム作物にすぐに吸収されるカルシウム 

土壌中のカルシウムの99.5% は植物が利用できませんが、Yaraの硝酸カルシウム(YaraLivaⓇ)のカルシウムはほぼ100%植物が利用できます。 

Yaraの硝酸カルシウムYaraLivaⓇ)100%水に溶けるため、他のカルシウム肥料とは異なり、作物へのカルシウムの吸収効率が抜群に優れています。 

水に良く溶けるカルシウム≒作物にすぐに吸収されるカルシウム

 

 

 

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本記事は、Yara英国法人提供の農業科学情報をGRWRSが翻訳、記事化し掲載しております。

Yara International ~世界最大の老舗肥料メーカー~

Yara Internationalは、ノルウェーに本社を置く世界最大の老舗肥料メーカー。
しかし、ただ肥料を供給しているだけではありません。世界人口の増加や 異常気象・地球温暖化といった問題により生産環境・食料事情が厳しくなる中で、「環境に優しい農業」をどうやって実現するのか?という課題に取り組んでいる「環境企業」でもあります。

また、Knowledge Grows というスローガンのもと、100年を超える長い歴史を通じ、世界各国の農業者にアグロノミー(農業科学)の最先端の情報を惜しみなく提供してきました。肥料メーカーでありながら、その本質は情報提供者であり地球環境を真剣に考える教育者・啓蒙者でもあります。

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